第3話 入学式


1週間前に登録を終わらせた俺達は、訓練と講習を終わらせ、さあダンジョンに行くぞ!という気持ちを持ちながら、校長先生の話を聞いていた。


「なあ春馬、校長の話長くねぇ?しりとりしようぜ」


「なんでしりとりなんだよ、他にいいものあっただろ!」


「じゃあなんかいいのあんのかよ」


「2人とも、先生こっち見てるよ!!」


「「やべっ」」


 和哉とバカ話をしていたら先生に睨まれてしまった。それなら……身体強化魔法の訓練でもするか。


「俺、先生に身体強化をバレない程度に発動する訓練するわ」


「おっ、それいいな、俺もやろうっと」


「もう2人共っ!……僕もやろう」


「ふっ、俺もやるしかないな、この流れは」


 そんなこんなで入学式が終わり、そこからクラス表を見て自分のクラスに別れていくのだが……


「まさか、全員違うクラスになるとは思ってなかった」


「うぅ、俺、友達できるかな……」


「僕は女の子に絡まれないか心配だよ」


「俺のデータには無い人しかクラスに居ない……だと」


「俺らがいないんだからそりゃそうだろ、というか望のそれは自慢でしかないからな?」


「だーかーら!そうやって言えるのは体験したことないからなんだって!」


 いつもの会話を楽しんでいると、クラス表の前にいる人達もそれぞれのクラスに行き始めていた。


「ま、放課後はダンジョン意外にもいつもみたいに帰れるしさ、気楽に行こうぜ」


「春馬……そうだな、俺も自己紹介ミスらないように頑張るぜ!」


「じゃ、放課後に」


「また後でな」


 そうして、俺達は各々のクラスに別れた。


 ――――


『1年Aクラス』

 そう書いてある札がかけてある教室が俺の1年間過ごすことになるクラスだ。

 頼む!めっちゃ可愛くて、めっちゃ性格いい女の子いてくれ!

 煩悩に塗れ散らかした願いと共にドアを開ける。

 ドアが開いたことにより、音でこちらを見てくる同級生は何人かいるが、殆どは友達とお話に夢中で気づいていない。俺は自分の席を確認して、日課のIVStarsの情報やダンジョンの情報をニュースアプリやSNSアプリで探し始めた。

 そんなことをして10分ほど経ったところで、先生が教室に入ってきた。


「今日からこのクラスの担任をすることになった、山本幹二(やまもとかんじ)だ。担当する教科は数学だ。あだ名はカンちゃん、彼女はいない。以上何かあれば質問は聞くぞ。」


「「「………………」」」


 クラスの全員が、圧倒された。

 見た目が、どこぞのヤーさんみたいな厳つさがある。目の傷とかどうやってできたんだよ、質問したいけど聞けねぇよ。ガタイもラグビー選手かってくらい良い、担当教科は人体の構造についてとかだろ。

 幹二先生は、俺達の反応をみて満足したようで、名前の順に自己紹介を始めさせた。

 出席番号1番は、俺だった……。仕方ないので前に出て自己紹介をする。


「青木春馬です。好きな物はIVStarsとダンジョンと体を鍛えることです。IVStars好きな人がいたら話しましょう、以上です」


 パチパチパチ…………


 小さい拍手が所々で起こっていたが、まあ自己紹介なんてそんなもんだ。そもそも好きな物の幅が狭すぎる、いくらダンジョンに興味があるお年頃とはいえ、やはりアイドルやアニメやそういったものが好きな奴もいる。だから、拍手が思ったより多くてよかったくらいだ。

 そんなことを考えていると面白い自己紹介が聞こえてきた。


「私は藍沢あいざわ夏乃かのです。私はダンジョンやプロ探索者の人達が好きです。1年間よろしくお願いします。」


 そんな自己紹介が聞こえ、顔を上げて見てみると、とんでもない美少女がいた。

 雪のような真っ白い髪に、優しそうな目、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。完璧な美少女と呼んでも過言では無い。俺は……いやクラスの全員が目を奪われ、彼女が着席するまで誰一人として声を発することは無かった。

 俺もその後は藍沢のことが気になって仕方がなかった。これまでトレーニングばかりに打ち込んで来た弊害か、美少女から目が離せなくなってしまった。

 彼女のことを考えているうちに自己紹介タイムは終わり、明日のことが先生から伝えられる。さすがに惚けていられないと思い、気を入れ直す。


「明日から授業が始まるからな、ちゃんと遅刻せずに来るんだぞ」


「「「はい!」」」


 俺の高校生活初日は、とても忘れられそうになかった。


 ――――


 教室を出て、和哉達と連絡を取り、校舎の前で待ち合わせすることにした。


「おう、おまたせ」


「意外と遅かったな、春馬にしては」


「トイレ行ってたから」


「ま、他の2人もまだ来てないんだけどな」


「龍蔵はわからんけど、望はどうせ女子に絡まれてるんじゃね?」


「はあ〜……羨ましいぜ、望は」


「望はいつもあんなこと言うけど、そもそも接点がない俺らからしたら充分いい思いしてるよな」


「ほんとだよ、俺は挨拶ですら緊張するのに……」


「和哉もちょっと大袈裟だけどな?そういえば和哉は自己紹介とか大丈夫だったのか?」


「ん?あぁ!それがさ、聞いてくれよ!ダンジョンが好きです!って女の子がいてさ、超可愛いんだよ!帰りに色んな人に声かけられてたし、俺なんかじゃ一生話せないと思うけど、ダンジョンに行ったらあんな女の子とも出会いがあるのかもって思ってたら、なんか上手くいったんだよな、自己紹介」


「急にめっちゃ喋るじゃん、でもこっちもそんな感じの女の子いたな、ダンジョンに潜るのかは知らないけど、プロの人達とか興味あるみたいなこと言ってた」


「へー、珍しいもんだな、案外皆のクラスにいたりしてな」


「さすがにそれは無いだろ」


「俺のデータにはあるぞ」


「うおっ!龍蔵、どこから湧いた」


「普通に後ろから来ただけなんだが、まあいい。俺のクラスにもそんなような女子はいたぞ。金髪ツインテールという属性モリモリみたいな女の子だったな」


「そんなヤツいたのかよ、この学校、意外と面白いやつが多いのか?」


「まあそれもどうせ望が持ってくんだぜ?」


「「………………」」


「人がいないとこで好き勝手言わないでよ」


「噂をすればだな、望」


「せっかく逃げてきたのに、こっちはこっちで僕の話してるし」


「まあまあ、この後和哉がマック奢ってやるから、許してくれよ」


「ほんと!?なら許す!」


「えぇ!?なんでおれぇ!?」


「冗談はさておき、そろそろ僕達の初めての挑戦に行こうか」


「そうだな、あれから6年」


「俺達はもう助けられるだけの存在じゃないんだ」


「まずは1層をクリア、だな」


「「「「おー!!!」」」」


 俺達4人はダンジョンに向かって歩き出した。


 ――――


 ダンジョンに行くのは4回目だが、本当に身近にダンジョンがある物だ。俺達の住んでる所からは徒歩20分くらいの所にある。


「はい、ダンジョンに入られるんですか?装備とカードの確認をさせていただきますね。」


 受付の人にカードを見せる。俺達の装備は、探索者協会から貸し出される初心者装備だ。ダンジョンの1〜5層まで貸出して貰えるらしい。


「はい、確認できました。それでは今日のダンジョン挑戦よりあなたがた4人はランク『F』になりました。」


 その後、受付の人にランクの説明を一通り受けてダンジョンに繰り出すと、入口の前で和哉が立ち止まり残る3人の方を向く。


「皆、俺達は遂にここまで来たんだな……!!」


「僕達はあの時、死んでもおかしくなかった」


「IVStarsに助けられなければ、今頃仲良く4人で天国を散歩していたかもな」


「それも悪くないけどな、でも俺達は生き残った、IVStarsの背中を追ってここまで来たんだ。」


 和哉が言うと他の2人も、俺も何かが込み上げてきた。

 最後にみんなで決めた目標を今1度俺が確認する。


「よし、行くぞ!俺達の目標は」


「「「「IVStarsを最速で超える!!」」」」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る