第1章 始まりの日

第1章 第1話 春馬、ダンジョンに挑戦する……?



『今日のダンジョンニュース!本日の特集はもちろんあのチーム!数年前からダンジョン攻略を初めて史上最年少でクラス6のダンジョン踏破!幼馴染4人パーティのIVStarSだ!!』

 

  朝のニュース番組のダンジョンニュース、この世界ではごく普通に、スポーツニュース等と同じ扱いで流れている。

  そのニュースの今日の目玉は俺達を助けた『IVStarS』だった。

  そもそもダンジョンには難易度毎にクラス分けされていて、全部で10のダンジョンがある。俺達の住んでいる北海道にはダンジョンが2つある。クラス1のダンジョンとクラス4のダンジョンだ。なので、初心者や初めて探索者になりたい人が多いランキングではいつも全国1位だ。なにせ、クラス1の超初心者向けダンジョンが街から徒歩10分程で行けてしまうから。だから『IVStarS』も最初はクラス1のダンジョンから挑戦していた、そして、俺達が死にかけたダンジョンもそこだ。

  そこから、6年でクラス6を完全に攻略するとなると前代未聞の大騒ぎだった。

  6年、つまり俺達も中学を卒業する歳になった。今日はツイてると思いながら、身支度をしていく。

  あの日から俺達は小学3年生にも関わらず全員が筋トレ等の体づくりを始めた。

  もう俺達の頭の中には中学を卒業後、ダンジョンに行くことしか頭になかった、誰が言った訳でもない、なのにジムで全員が顔を合わせた時は流石に笑うしかなかった。それからずっと筋トレをし続け、体力もつけ、俺達4人は中学3年とは思えない体つきになっていた。

「なぁ、春馬!俺達の初めてのダンジョンはいつにする?」

 

  和哉がワクワクしながら聞いてきた。

  こいつは沖田 和哉おきたかずや。小さい頃から明るい性格でムードメーカーのような存在だ。実はメンタルが弱いという弱点があるのだが……そんなものは和哉のビジュアルの前では通用しない。ひたすらにイケメンなのだ、だがこれまで彼女が出来たことは無い。

 

「僕達、これまで頑張ってきたもんね!僕はいつでも大丈夫だよ!」

 

  そう言って、握り拳を作るのは琥珀 こはくのぞむ

  こいつは、言動がいちいちかわいいタイプのやつだ。気配りもできて優しいが、身長が低いため、クラスメイトにはマスコットとして扱われている。俺達と一緒に筋トレをしていたのもあり、普通にバキバキの体をしている。

 

「データも揃えたしな、後は時期だけだぞ」

 

  メガネをクイッとしながら書類を整理するこの男の名前は朝倉 龍蔵あさくらりゅうぞう

 明らかに名前とイメージが違うが、こいつは頭がおかしい。いきなり、「パーティには頭脳が必要だ、頭脳といえば眼鏡で七三だろ?」という謎の持論を持ち出して、次の日にはそれにしてくるという位だ。頭は確かにいいが残念でもある、念の為言うがバキバキだ。

  そいつらと話したのが3週間前、そして今日に至る。

  ダンジョンの前まで行くと受付の前に、3人がいた。

 

「おせーぞ!春馬!」

 

「あぁ、悪い、ダンジョンニュース見てたら遅れた」

 

「どうせ今日のニュースはIVStarSの特集だろ」

 

「そうだろうな、前代未聞の最年少クラス6探索者だ、俺達も後を追わなければな」

 

  集まってそうそう『IVStarS』の話になり、これは止まらないと思われたのか、受付の人が話しかけてきた。

 

「すみません、あなた方はダンジョンに初挑戦になりますか?」

 

  綺麗な女の人だった、日本人の象徴とも言える黒髪を肩に少しかかるくらいまで伸ばし、キリッとした目付きに俺達は少し見惚れた。

 

「あ、はいっ、俺達4人初めてなんですけど……」

 

  流石の和哉もたじろいでいた。

 

「でしたら、あちらの建物に行って探索者登録をお願いします」


 俺たちは頭に?マークを浮かべる。それを見兼ねてか、受付のお姉さんが案内をしてくれる。


「君たちは、中学校を卒業したばっかりかな?だとしたら知っていなくてもおかしくないね。探索者になるにはまず登録が必要なんだ。住民票とか保険証とか身分の分かるものがないと登録できないんだけど、それは持ってる?」


 俺はそんなものが必要だなんて思っていなかった。他の3人をみても同じような反応をしていた。

 

「持っていないのなら、1回お家に帰って、必要なものを持ってまた来てね。」


 そう言ってお姉さんは、登録に必要な物を纏めたプリントを人数分用意してくれた。


「そうして、俺達4人の初のダンジョン挑戦は幕を閉じた」


「いやいやいや、変なナレーション勝手に入れんじゃねーよ!」


 俺がボケると和哉が鋭いツッコミを入れてきた。

 だって、そうでもしないと微妙な空気が……。


「ま、まあ仕方ないだろう、俺のデータに無かったことを考えれば全員が知らないのも納得が行く」


「こういう事態を防ぐためのデータキャラだと思うんだけど……」


「うぐぅっ!」


 望がボソッと放った一言が龍蔵のハートを削る。


「まあ、とりあえず帰って親に書類のこと聞いて、明日また行こうぜ」


 そうして、本当に俺達の初のダンジョン挑戦初日は終わっていった。

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