第3話、城のカーテンレール、ホームレス

「新しいカーテンレールを持ってきてくれないか?」

 城からの連絡に家具屋のトウ・レは背筋を伸ばした。二十年店をやっているが、城からの注文は初めてだ。城の部屋数は多い、大規模な改装工事でもあれば一財産作れる。

「それで、いかほどでしょうか?」

「一本で良い」

 ドウ・レは拍子抜けした。

「そうですか、ではどのようなレールをお望みですか?」

「丈夫なやつが良い。実はカーテンレールが一つ壊れてしまってね。おそらく、子供がぶら下がったんだろう。丈夫なやつをもらえないだろうか」 

「そうですか。わかりましたうちで一番丈夫なやつをお持ちします。寸法を教えてください」

 ドウ・レはメモ用紙に寸法を書き留めた。一本とはいえ、城に入れるのは、滅多にない。ついでにカーテンのサンプルを持って行くことにした。

「色はどういたしましょう」

「白で良い」

「わかりました。いつお持ちしましょう」

「できるだけ早く、今日はだめか?」

「いえ、お持ちします」

 男は電話を切った。ドウ・レは、早速倉庫に入り、店で一番頑丈なカーテンレールを出した。こいつなら、大人がぶら下がっても大丈夫だろう。



 ホームレス


 この国のホームレスの寿命は短い。十年ほど前に、国が大々的な追跡調査をおこなった。住む場所を失い死ぬまで、平均すると三年程度で亡くなる。あまりの低さに、それ以降その手の調査は禁止された。職を持ち、住む場所がある人間ですら飢え死にする国だ。ホームレスが長く生き抜くには、かなりの知恵と運がいる。

 つい最近も、こんなことがあった。ホームレスが、若い男からリンゴをもらった。礼を言い、かじりつくと、ものの数分でそのホームレスは絶命した。リンゴに毒が塗ってあったのだ。他にも何件か同様の事件があった。犯人は王の親族の大学生グループで、清掃と称して行なったそうだ。大学生グループは、厳しい注意を受けた。彼らはやがて役職に就く。

 一人のホームレスが、立派な石構えの門柱の扉の前に立っていた。ペーと言う名を持っている。

「すいません旦那様、お恵みください」

 地面に膝をつき、ペーは拝んだ。

「もう三日も何も食べていません。このままでは飢え死にしてしまいます」

 しばらくすると、門が少し開いて、紙袋が放り投げられた。

「ああ、ありがとうございますー。このご恩は決して忘れません」

 紙袋をかっさらい、すたすたとペーは立ち去った。中にはパンが入っていた。林の中に入り、周りを見渡しパンをかじった。半分ほどかじったところで、紙が出てきた。それをペーは、何度か読み、飲み込んだ。

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