第7話 霊感少女と巨乳戦士  1

私はアンジェラ。物心ついた時から幽霊は見えるし、話は聞けるし、夜はうるさくて眠れないし、自分の体質を恨めしく思う毎日よ。

 聖地に幽霊が見えなくなる古代遺物があるので、聖地巡礼を始めたんだけど、ひょんな事から巨乳の戦士と一緒に旅をする事になってしまったの。

 完璧ボディの持ち主であるエリアさんは御年24歳という事で、完全なるいき遅れ令嬢って事になるのでしょう。

 どんなものを食べても品はあるし、食事のマナーの完璧さから判断するに、何処かの貴族の三女か四女、親に結婚を勧められるも反対し、家を飛び出して今に至るみたいな感じなんじゃないかしら。


 親は王宮に勤める騎士の家系か、他部族との戦闘が頻回にある辺境周辺の領主の娘か何かで、女だてらに戦う事に特化しているのは間違いないわけよ。

 美人だし、ムッチリボディだし、女性の嫉妬を買う事間違いなしって感じの人だから、男を間に挟んでの女同士の戦いの中で、うっかり呪いでもかけられる事になっちゃったのかしら?


 パッと見て呪いがかかっているようには見えないんだけど、厳しい戦士の霊の後にぼんやりと見える何かが作用しているって言えばそうなのかな?

 だけど、私は率先して幽霊なんか見たくない!

 エリアさんもそれほど急いで呪いをどうにかしたいって感じにも見えないし、聖地に行ってなんとかなるものならそれでいいと思うし、今の所はノータッチでいきましょうって思う事にしたの。


 それにしたって、

「えー〜―!もう朝なのー〜―!もうちょっと眠らせてくれよー〜―」

私たちは女二人の巡礼の旅を始めたのだけど、同性だから部屋は一緒、イビキとか寝言とかうるさくないからまだ良いんだけど、エリアさんって本当に寝起きが悪いのよねぇ。

「むりだよー〜、眠らせてくれー〜―」

「眠らせてくれじゃないですよ!今日は朝早く出発しなくちゃ、日が暮れるまでにカタンザーロまで到着する事が出来なくなるじゃないですか!私は最低限しか野宿はしたくないので起きてください!起きてください!」

 布団を剥がしてようやくエリアさんは起き上がったけど、まだ目を瞑っている状態、動きが止まっている。

「眠いー〜」

「眠いじゃない!起きて!起きて!」

 ずんどうの寝巻きを無理やり脱がせてシャツを渡して、革の胸当てを後ろから回って装着して、ズボンを足から通す。ズボンはお尻まで自分で引っ張り上げているけれど、なんで私が靴下を履かせてブーツまで履かせてあげなくちゃいけないのよ!


「もう!何でもかんでも人にやらせないでください!」

「ごめんね〜、だけど眠いんだもんー〜」


 うざい!本当にうざい!

 24歳、独身巨乳戦士のエリアさんは本当に生活能力ゼロの女なのよ。

 放っておけば汚れたままのパンツでも3日は履き続けちゃうっていうタイプ、洗濯は大都市でまとめてお金を払って済ませるタイプ。

 洗濯中は裸で部屋をうろつき回っているようなタイプの人間だったのよ、


「常に清潔に!清廉な淑女であれ!そんな風に家では教わらなかったんですか?」

「えーー?聞いた事ないなー〜」

 なんで聞いた事ないのよ!騎士家系か辺境近くの脳筋ばかりが住み暮らす地域の出身なのかしら?


 深紅の美しい髪の毛を後一つに縛り上げているのも、戦いやすいからとか、女戦士としてとかじゃなく、自分で縛るのはそれしか出来ないからだし、お肌のケアとか化粧とか、無頓着どころか、使用方法すら知らないタイプ。

「昨日買ったパンが朝食になるから、今食べて、水飲んで、途中でもよおしても困るからきちんとお花摘みに行ってくださいね?」

「このパン硬くない?」

「ぶっ殺してやりましょうか?」

 初期の設定としては、一人で巡礼の旅に出る貧相な少女(わたし)を心配した女戦士であるエリアさんが、庇護欲を募らせて旅の同行を申し出てくれたっていう事にしたんだけど、現状、私が幼子を連れて歩くオカン状態となっているのはどうなのかしらこれ?

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