第11話 おひなさま
3月3日は、学校給食でも3色ゼリーがデザートとして出たりして、お祝いとしてはメジャーだとは思う。
私と妹の二人がいる実家では、お祝いをしてもらったことはほぼない。
今はちらし寿司を食べよう、ケーキも食べようみたいな日になっているが、私の小さい頃はそこまでもなく、ただお雛様を飾って、ひなあられなどを食べるという日であった。
立派なお雛様を持っているお宅では、近所の女の子の友達をよんで、パーティーのようなことをしていて、私も何度か行ったことがある。
「うちはそういうのはしないの?」なんてことを言うようなバカでもない私だが、そういう集まりに呼ばれたというのはさすがに母親には告げねばならず、
「〇〇ちゃんちのひなまつりに誘われたから、行ってきます。」と言った。
おこづかいの中から、その〇〇ちゃんのおうちに持っていくプレゼントを用意して、(みんなで交換するというものだったと思う)出かけようとしていると、
「あんた、私をバカにしてるの?あんたなんか呼ばれる人間じゃないじゃない。
それに、〇〇ちゃんちっていい雛人形見せびらかして趣味の悪いことするんだ。
そんなのに行くのはバカのすることだよ!」と怒り出す。
「行ってきます」
相手せずに約束の時間に間に合うように家を出た。
楽しい時間を過ごして帰ってきてみると、ご立腹のまま。
別に家に戻っても、負けないようなご馳走を用意してくれているわけでもなく、ただただ不機嫌な母がいるだけ。
「あんた、ちゃんと〇〇ちゃんちで挨拶したの?
〇〇ちゃんちで失礼なことしていないでしょうね。
していたら、アタシが恥をかくんだからね!」
いい気分で帰ってきたのに台無しである。
同年代の夫も、夫のご近所の女の子にそういう集まりに呼ばれたことがあるそう。
きれいに飾られたお雛様たちを見て、楽しい気分になれる集まりだから、おうちによっては、男子も呼ばれるのね。
母は元から友達ができない人なので、そういうことも皆無だったのかもしれない。
それで、私が友達から呼ばれて出かけていくのが憎らしかったのかも。
自分が母の立場だったら、そんな友達がいること、誘われることが嬉しくて、家でもちゃんとお祝いの準備もしたいし、
「一緒にプレゼントを選ぼうか?」と考えてみたい。
当時も何なんだろう?と不可思議だったけれど、実際に親になってみると、あんな対応はしないわと思う。
謎の人、それは母 ねここ @namazou
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