第6話 孫は可愛いらしい

母は娘二人を苛め抜いたが、どうも私の子どもたちは純粋に可愛いらしい。

そうはいっても、苛め抜かれた娘の立場からすると信用したくはない。

可愛いといいながら、何かのスイッチが入ったら豹変しそうだから。


これは私の夫にも言っていないことなんだが、私が二人目を身ごもった時に、実家に妊娠を連絡して、母にこう言われたのだ。

「あんたみたいなできてない人間が子どもを二人も育てられないに決まってる。

 今すぐ、お腹の子をおろしてきなさい。早く。病院に連絡して!

 一人だけで十分よ。」


夫と二人目が出来たのだ、嬉しいねえという話しかしていなかったので衝撃。

私は一人っ子ではない。

母に育てられて、なぜ私が二人を育てられないと断定する?


「あんたに言われたくないわ」と頭にきた私は電話をガチャ切りして、息を整えていたら、あちらから何度も何度も電話をかけてきた。


「おろせ」「おろせ」「おろせ」

「旦那さんに知られないうちに始末しろ」

「病院にいけ」


夫はきちんとした仕事をして、子どもが二人いても問題ない状態であったのに、なんと失礼なことを一方的にまくしたててくるのだと応戦はしたが、母は一度何か思い込むと失礼とか道理とか関係なく自分の今の考えだけを押し付けてくる人間だ。


これは何を言っても無駄だな、父に告げ口してこちらへ接触しないように言おうと、静かに電話線を抜いた。

こんな電話を受けていたら、お腹の子に障る。


後日、父に電話の件を相談すると謝られた。

「そんなことを…言うんだな」

定年後に母と過ごす時間が増えて父は本当の母の姿を知ることになるのだが、その時はまだ母が悪態はついても本当は心根の優しい人だと信じていた父にはショックだったようだ。


一人目も二人目の出産も実家の母に頼らずに、私たち夫婦のきょうだいにサポートしてもらって、居住地で過ごした。

うっかりほだされて里帰り出産なんかしたのなら、父が出勤している時間帯にどんな嫌がらせされるかわからないし、私の体が休まらないと思ったのだ。

家事ができない人にサポートはできない。当たり前だろう。

可愛い赤ん坊が急に手元に現れて、それを愛でるだけ愛でたいという願望に付き合いたくはなかった。


それにおろせと言ったのにどうして里帰り出産してもらえると思うのか不思議。

その後何事もなかったかのように母は二人目の子も可愛がってくれたが、私は母の神経がわからないまま。


自分が責任をもって世話をしたり育てたりしないのなら、赤ん坊や小さい子は可愛い。それだけなのだろう。



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