第2話 美味しいものは罪
RPGゲームで魔法の書を入手すると、自然と魔法が使えるようになったりする。
本来は書を入手するよりも習得する努力の方が大変であるのだが。
母はたくさんのレシピ本を積み上げながら、まったく料理が出来ないタイプの
人であった。
最低限の家事は母の年の離れた兄夫婦の家に居候していた時に教わったという話で
あったが、何も見ずにひとりで作ることができるものはそれほどなかったはずだ。
ハンバーグでさえ一からは作れなかった。
ご飯はセットすれば炊飯器が上手に炊いてくれるはずだ。
それもあまりしっかりお米を研がないのと、酢は体に良くて殺菌作用もあるという
変な知識が入ったせいで、古米のシャリみたいなものを延々と食べさせられたことがある。
家のご飯もおかずも美味しくなく、中学まで給食が出る学校で助かったなと思う。
たまにはしっかりレシピ本を見て、美味しいものを作ってほしいと懇願したところ、
怒りだす母。
これまでも私は頑張って料理をしている、これ以上私の負担を増やすつもりかと。
私の料理の腕はいい、これ以上できるのはプロしかいない。
ほかのお母さんたちも私とそんなに変わらないはずだ。
お前たちは贅沢だ、甘えている、ワガママすぎて嫌な人間だと。
テレビ番組なんかで美味しいものがたくさん紹介されるが、あれは夢みたいなものだ。
現実はそんなに家庭料理も何もかもそんな美味しいものではない。
栄養さえあればいい、文句言わずに食べられることに感謝しておけと言う。
美味しく食べたいという欲求は否定される。
嫌だったら早く家を出て行って、自分のお金で店へ行って食べろと言われると
それはそれで間違っていない主張だから、それ以上何も言えなかった。
まだ私には自分で作るという選択肢はなかった。
なぜなら、冷蔵庫に入っているものを勝手に使うことも許されなかったからだ。
自分のお小遣いで材料を買い、おかずやお菓子を作り置きしてみたら
学校へ行っているうちに母に食べ尽くされた。
お小遣いは家のお金の一部であり、それで作られたものは母に食べる権利があるから
お前には文句は言わせないという理論だった。
どんなジャイアンかと今でも思う。
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