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世一は畑仕事をしながら納言について、悩んでいた。
「やはり納言から身を引かねばならぬっ!」
「私から告白したのに世一は情けないのぅ」
いつの間にか納言が後ろにいる。
「折角貴族に生まれたのに御主の方が情けない!」
納言はふと思いつく。
「貴族で思いついたんじゃが、世一は詠を読まぬかっ?」
「今はそんな話をしとらんし、詠なんか考えてる暇はない」
「全くつまらん男じゃのぅ。働くのは仕方ないが息抜きせぬかっ?」
「……たしかに働いてばかりでは身が持たぬ。しばしお前の相手をしてやろう」
世一は納言を邸に連れ戻そうと考えた。
「それは嬉しいわ。では、畑仕事を一から教えてくれぬかっ?」
世一はずっこけそうになる。
「お前は相変わらずのお気楽でいいの」
そこに仕者と共に光君の妻葵が現れる。
「これは珍しい御方ですわ」
納言は頭を下げる。
世一も隣で頭を下げる。
「私の夫に手を出しながら下民に手を出すなんていやらしい女ですこと!」
葵は世一を見下す。
実は世一は幼少の頃より彼の両親は貴族に見下された上に暴行された過去がある。
それ以来、彼は貴族を嫌い、憎んでいた。
だが、同じ貴族である納言には憎しみなんてなかった。
世一は今にも殴りたくて震えていた。
「お言葉ですが、葵殿が毎日口にする食事は毎日働きながら丹精込めて作ったものは誰が作ったのでしょうね」
世一も先に納言が口に出す。
「目上である私に口答えする気か?」
納言はくっきりとした偽りのない瞳を葵に見つめる。
「今日のところは挨拶ですわっ!」
葵は仕者と去っていく。
2人は顔を上げる。
「全くお前はヒヤヒヤさせるな」
「世一こと女相手に手を出そうとしたでないか?」
世一は言葉が出なかった。
「お礼はいらぬから今から何する?」
「漬物でも食わしてやる!」
「ホントかっ!」
納言は目をキラキラさせる。
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