第2話 偶然?
ぼくの家から湖までは2つのとても小さな丘を越えた先にある。ぼくは、小さな丘から見える湖とその先にある小さな港町が見えるこの景色がとても好きだ。いつも暇なときはそこへ行って泳いだり、景色を眺めたりしている僕専用の場所だった。
さっき女から電話があったその湖に着くと、見慣れない赤い軽自動車が止まっていた。電話してきたあの若い女が乗っていると思って車の前に向かうと、助手席に何かが入った紙袋がのっかっていて、運転席にはデコレーションのいっぱいついた携帯が置いてあったが、若い女はいなかった。車のドアが開いていたから運転席に乗り込んで紙袋の中を確認してみると中にはお菓子みたいな箱がいっぱいあって箱の中にはオレンジと白の色が付いたカプセルが入っていた。携帯のほうはロックがかかっていたので中身を見ることはできなかった。しばらく車の中で待っていると昼間の太陽のおかげかだんだん眠くなってしまった。
しばらくして起きると太陽はもう地平線に差し掛かり、湖に反射して結婚指輪みたいな輪っかになってキラキラ輝いていた。「もう夕方か、」そうつぶやいてぼくは家に帰ることにした。
玄関のドアを開けおじいちゃんが「おかえり」と言った。自分の部屋に戻り、さっき紙袋の中に入っていたお菓子みたいな箱一個を持って帰ってきた。今日は何だったんだろう。自分の部屋に戻る。女に言われた湖には女のものらしき車があったが、女はいなくておまけに怪しいカプセルが車の中にはあった。明日は学校に行かなきゃななんて思いながらその日は素直に眠った。
翌日、いつものように目覚ましに勝って歯を磨いた。朝ご飯はいつも食べないけど今日は食べていこうと思った。学校には友達と言っていいかわからないけどよく話すたけるがいる。たけるには好きな子がいて、その子の話をいつもぼくにしてくる。今回はどうやら大きなニュースらしくてたけるは興奮していた。席替えでその好きな子ととなりになったらしいのだ。
その子の名前はミカという。黒色の背中まで伸びたサラサラの黒髪が彼女の特徴だ。ぼくは彼女のキラキラ透き通った目がまぶしいのか何なのかわからないけれど目を合わせるのが苦手だった。たけるは休み時間いっぱいミカの話をして自分のクラスへ帰って行った。
学校から帰り、玄関を開けると部屋の電気が消えていた。おじいちゃんはどうやら買い物にでも行っているらしい。自分の部屋に戻り荷物を置き何となく気になって湖に行ってみた。小さな丘をのぼり、港町を一望できるところまでくると昨日まであった赤い車はなくなっていてそこにはミカがいた。ミカは港町と湖のほうを眺めていたが僕に気が付くとミカは僕が来ることを待っていたかのような雰囲気で「偶然だね」と笑った。
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