廃村
オレは大学生の康太。
その夜は友人の零士の家で女友達の美紗と沙夜と騒いでいると酒の入った零士は口にする。
「なぁっ、肝試しに行かねぇ?」
「はぁ?」
「実はよ、オレの知り合いが山ん中を彷徨ってたらあるはずもない村を見つけちまったんだとよ。それが真実かどうかをオレたちで検証する訳だ」
「面白そうじゃん!」
美沙はノリノリだった。
オレと沙夜は2人のテンションについていけなかった。
そんな彼らの部屋の外、カーテン越しから電柱の上に座って覗き見る節目稲荷はクスッと微笑む。
夜の11時にオレの運転で助席に沙夜、後部座席に零士と美沙が乗り、出発する。
具体的な場所は分からず、とりあえずその友人が迷ったとされる山ん中をひたすら走る。
すると、沙夜が蔓に絡まった古い木の看板とそれを示す細道を見つける。
「ねぇ、あれじゃない?」
オレは手前で車を停める。
零士は車を降りると看板に近づく。
文字は擦れてはいるが、村名以外は辛うじて読める。
〈○○村はこちらです〉
「ちょ、ホントに行くの?」
さっきまで零士と一緒に騒いでいた美沙は怯える。
「ビビったのか?お前は行くよな?」
零士はオレに問いかける。
「そ、そんな訳ねぇだろう!」
オレはつい声を上げる。
「私、車で待ってていい?」
沙夜は手を上げる。
「じゃ、私も!」
美沙も手を上げる。
「女の子2人だけだと心配だからオレも残るよ」
オレはそう答える。
「何だよ!結局はビビってんじゃんか?」
零士は細道の奥へ歩いて行ってしまう。
「おい、零士!」
オレは叫んでも零士は振り返ることはなかった。
そして、これが零士の最期の姿となる。
翌朝まで戻らなかった零士に何度も電話をかけるも通じず、警察や親に連絡するも何の手掛かりを得られなかった。
彼はどこに消えたのか?
稲荷はクスッと微笑む。
「得体の知れない場所に好奇心だけで行くのは危険よ。みんなは真似しないでね」
稲荷はそう言い残して闇に戻っていく。
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