第39話 ただいま!!
「ただいま!!!」
「あ、ファルヴァント様〜やっと返ってきた……」
「長かったなぁ……」
「長かったですね」
「俺の体感では何十年も経った様に感じます」
「実際十日間ぐらい帰って来なかったですし……」
そ、そんなにあの空間にいたんだ…そりゃ長くも感じるよね。
『ぐうぅ』
お、お腹が……は、恥ずかしい…そういや俺十日間なんにも食べてなかったもんなぁ……そりゃそうもなるか。
「す、すぐにお作りします」
「うん、ありがとう」
「お疲れでしょうからお部屋へお戻りください。話はその後にお聞きしますから」
「そうさせて貰うよ」
さて、俺の能力はどう言ったふうに変化したかな?実際魔法を使ってみないと分からないけど、魔力量程度なら部屋で試しても大丈夫だろう……多分……そういや、神様から力を分けてもらったんだよね?てことは俺もう一回聖属性の訓練しなくちゃならないとか言わないよね?でも、魔力を放出していた感じ聖属性の魔力というものが全く解いて良いほど感じられなくなってしまっている。これは異常な事態だと思うが、もうすでに起きていることなので事実として受け入れるしかないだろう。
俺の聖属性の魔力……またあの苦痛を味わうのかと思うと今から涙が溢れてくる。
コンコン
「入れ」
ノックの音が聴こえ、さっきまでの弱気を封じ込める。
「ファル!」
「涼牙!」
さっきの思考がなかったかのようにパッと顔を上げる。さっきので迎えにいなかった為、どこかに行ってしまったのかとも思ったが、ちゃんと俺のことを待っていてくれたらしい。嬉しい。
「なんかすごく久しぶりに感じるよ」
「そうだな。たった十日間だったけど、すごく長十日間だった」
「あはは。おあんなじだね。無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」
「うん。俺も涼牙が元気そうで嬉しいよ」
「うん、儀式してたんでしょ?どんな儀式だった?」
「う〜ん……」
正直な話、痛かったイメージしかないんだよね。ただひたすらに苦痛でその後は真っ暗の中に放置されるという謎の
精神破壊。とってもよろしくなかった気がする。それをそのまま伝える?ちょっとなぁ……精神年齢が高くても実年齢はまだ一歳くらいなのだ。おそらくだけど……若干歩けてるし、喋れてもいるからもう少し年齢がいっているかもしれないけど。いや……転生隊はれっきとした10歳くらいに見えるけどね。やっぱ体の機能って魔法で成長させるのは失敗する事があるからね。喋れなかったりって例もなくはないみたいだし……
考えた結果俺はこう答えることにした。
「なんかちょっと神様って思ってたのと違った……」
「へぇ?どんな感じ?」
「うーん……神々しくなかった」
「………うん」
この発言を耳にしたアイエティスは天界で叫んだのだった。
「神々しくないとはどういう意味だ!」
と。
一方ファルヴァントは実際のことだし……別に良いよね?と思っていた。
「あとは面白いこととか無かったの?」
「面白いことはなかったかなぁ」
「そっかぁ。これ、僕が作ったの。食べて」
「うん、ありがとう。お腹空いてたから嬉しい。一緒に食べよっか」
「そうする!」
俺は作ってくれたというお菓子をお皿に並べ、紅茶を淹れる準備を始める。
久々に甘い香りの紅茶を入れた。自分はさっぱりした匂いを好むから。尚のこと久々に感じる。
「美味しい?」
「うん。とっても美味しいよ。10日間何にも食べてなかったからね」
「え?何にも食べてなかったの?」
「うん」
「じゃあ、もっと持ってこないと!」
「大丈夫、クロムと晴樹が持ってきてくれるって言ってたから」
「そうなの?うん、そろそろ来ると思うよ」
「うん」
コツンコツンと響く足音がこちらに近づいてきている。靴の音からして恐らく晴樹かミカだろう。何故わかるのかって?それは靴の底が金属でできているかいないかの差だよ。多少音が違うんだ。硬い素材と金属は。普通の人が聞いたらおんなじ音に聞こえるだろう。俺の耳がいいだけだ。
コンコンとノックの音がする。涼牙とアイコンタクトを交わし、俺は「どうぞ」と声をかける。部屋に入ってきたのは晴樹だった。手には沢山の料理を持っている。どれもこれも美味しそうな匂いを放っている。俺のお腹がぐう〜となりそうになったので咄嗟に防音結界を張って凌ぐ。恐らく晴樹にはバレているだろう。晴樹は人間の中の魔力の動きまでわかるらしい。俺は結構高度な隠蔽術を使っているのにも関わらず見抜かれているのはちょっと気に食わないけど、晴樹の特技でもあるので勝てなくてもおかしくないと思って我慢している。本当は今すぐその技術を聞き出したいが、魔族にとってあまり情報を流出させるのは良くない事なのであまり聞かない様にしているのだが、その配慮には恐らく気がついていないだろう。
「お待たせしました。あ、涼牙もきていたのですね。一緒に食べてはどうですか。沢山作ったのでおかわりも有りますし……」
「うん、じゃぁ足りなくなったら呼ぶね。ありがとう」
「はい」
「あと、ちゃんとご飯は食べるんだよ」
「ファルヴァント様にはお見通しですか。そうさせて頂きます」
そう、俺はあることに気がついていた。それはクロムと晴樹とてもやつれたことだ。この十日間で何があったのか分からないけど、すごく痩せた様に見える。それに2人の顔には疲れも見え、目の下にあるクマを隠しきれていなかった。少し休憩という名のボーナスを与えてあげないとな。俺はそう思ったのだった。
しばらくしてお腹も落ち着いた頃、俺は亜陸に書類仕事を頼み、自分は外交問題に取り掛かった。本来魔王なんかがやる仕事じゃないんだけど、疲れていそうなクロムと晴樹には休んで貰いたいので俺が代わりにやることにした。そのことを亜陸に話たら呆れられたけど、言っていることは分からなくもないから仕方なく協力してやると言われた。確かにやつれたのは事実出した。多少は心配だ。と言っていたので、クロムと晴樹は大分亜陸に懐かれたのではないだろうか?子供達にも懐かれたのだろうか?結構引っ掻かれてりしてた記憶がある。
この十日間で場内の様子は大分変わった。こんなにも変わるんだと自分でも驚いたぐらいだ。いつもこんなにも大きな変化が怒りながら生活していたなど思っていなかったからなんだか不思議な感じがするが、これはこれで色々な事がわかるので、少しの日数城を開けるのを定期的に行ってもいいかもしれない。それなら城の城お京の何がいけなくて何がいいのかがよくわかると思うんだよね。視察という名目で少しの間留守にできないだろうか?
そういえばそろそろコロシアムができるはずだ。それの視察にも向かわなくちゃならないし、ちょうどいいのかもしれない。外で情報収集がてら場内の様子を客観視するのには。
「ファル、そろそろ寝なくちゃ。おやすみ」
「うん、おやすみ」
俺は机から顔をあげ、涼牙のかを見て返事をする。俺も区切りのいいところまで終わったら終わりにしてもう寝ようと決めて。亜陸も頑張ってくれたお陰で俺の仕事は捗った。明日は久々の休日になるだろう。騎士達も交代で休んでもらってもいいかもしれない。城の警備が薄くなるかもしれないけど、俺が中にいるから大抵のことはどうになかる。
「さ、休暇のために頑張りますか。俺のではないけど」
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