第25話 新しい情報

 俺の誕生会の時にもらった長ったらしい報告書をまだ読んでいないのを思い出し、俺はそれに目を通していた。それを今から読み上げようと思う。


〈勇者のプロフィール〉

・坂井勇也(Sakai Yuya)

 性別:男

 年齢:17

 職業:勇者

 武器:片手剣使い

 得意属性:光

・遠藤胡桃(Endo Kurumi)

 性別:女

 年齢18

 職業:魔道士

 武器:杖

 得意属性:全て

・秋元奏(Akimoto Kanade)

 性別:女

 年齢:18

 職業:魔法戦士

 武器:レイピア

 得意属性:炎

〈所属国〉

アーレスト王国

 アーレスト王国は人間界の中で最も国力があると言われている国で、先進国。スラムや貧しい人が多いが、一部の街はとても華やか。この国ではスラムや貧乏人を毛嫌いするものが多い為、あまり好まれた国ではないが、国力が大きいのは確か。

〈勇者の状況〉

 坂井勇也の現在の力量で言えばクロムやミカあたりに妥当すると考えられる。剣捌きなどは拙く、慣れていない感じがするが、勇者は女神から加護をもらっている為ある程度の強さを誇っている。

 遠藤胡桃の現在の力量は魔力枯渇時の誠に妥当すると考える。魔力の扱いは汚いが、魔力量でどうにか魔法を発動させている状況。

 秋元奏の力量は他の2人と比べると劣るが、冷静な判断力を持ち合わせており、仲間を纏めるのに向いてる。まだ魔族で言う中ぐらいの力量だが、判断が早い為、時期に強くなると考える。

〈装備〉

 装備は全勇者たちが使っていた物を使っている模様。

〈勇者の出現〉

 勇者は10月25日に聖石から召喚された。異世界の名前は地球で、その世界の日本という国に暮らしていた。そしてその日の朝方紗衣斗という人間も行方不明になていたのでこちらの世界に来ているかもと思ったが、見つけることはできなかったのでただの行方不明だと考えられる。


 このような感じで報告がひたすら書かれていた。流石に全部読むのは大変だから途中までだけどね。これが何十枚もあるとなるとちょっと読みたくもなくなる。


 そして俺は見つけてしまった。遠藤胡桃えんどうくるみそう、俺の初恋の子……その子がこの世界に召喚されていた。(日常2参照)それも勇者として。遠藤胡桃とは茶色い髪にエメラルドグリーンの目をした子だ。身長は確か148センチで、すごい細身な子。


 そして他の勇者も胡桃のおまけとして説明する。


 坂井裕也とはクラスの中心人物で成績優秀、運動神経抜群、顔面最強、この三つが揃ったちょうハイスペック男子である。神は金に染めてあり、瞳は水色。瞳の色は変えてないそうだ。身長は知らん。とりあえず176センチだった俺より高かったから180くらいあるのではないだろうか。


 秋元奏は坂井勇也とよく一緒にいた女子。身長は167と少し高い?かわからないが、周りと比べて高く、スタイルのいい女子だ。俺は全く関わってこなかったからよく知らないが、割と男子に人気があった。あくまでオタクからの視線なので一般的な評価は知らない。ちなみに珍しい、黒髪、黒眼である。


 説明あこのくらいかなぁ?まさか俺と同じ学校の子がこの世界に来てるとは……正直びっくり。なんだかんだ言って名前知らなかったしなぁ。


 というか最後の確実に紗衣斗って俺のことだよね。向こうじゃ失踪したことになってんのか。そういや親とかに何も言わないで消えたようなもんだもんな。心配してっかな?心配しててくれたら嬉しいけどね。


 それと所属国についてだが、俺はアーレスト王国について少し知っていることがある。クロムが食料調達へ向かっているからだ。一部の事案はとても良いけれど、一部は最悪なのだそうだ。ちょっとでも綺麗な服を着ていれば持ち物を根こそぎ取られるとか……クロムはその道を毎回使っているみたいなので、対処法も教えてもらった。魔法で結界を張っておくのがいいそうだ。その結界はクロムが作った結界で、触れても何も起こらないらしい。この世界の結界は売れるお弾き飛ばされたり、ハイになるまで燃やされたりと、色々な効果が発動するものだ。だが、その効果を一切なくし、触れても大丈夫なようにしたらしい。人間界で人を傷つけると、厄介なことに発展するから効果のある結界を使うわけにはいかなかったのだそうだ。


 それのおかげでクロムに触れられないし、ものにもさわれない。そんな助教を作り出すことに成功したらしい。最初は色んな人に飛びかかられたけど、見えない壁にぶつかった様に一定の距離近づくと前に進めなくなる。


 なので周りを気にしないで進みことが出来るのだそうだ。俺はそこに行った事ないから分からないけど、スリが多いのは本当らしい。


 後は勇者の力量か、坂田勇也のクロムに妥当ってどのくらいなんだろう?クロムが戦ってるのなんて見たことない。全力で走っているのは見たことあるけど……


 クロムも魔王の世話役を任せられるくらいだから強いんだろうなぁ。晴樹は世話役っていうか、魔王の万が一の護衛役?みたいな感じだ。


 胡桃のの場合、魔力枯渇時の誠って……そもそも真の魔法を一切見たことなからわからないんですけど?それに、魔力が枯渇してるのに魔法撃てるの?すごくない?俺は魔力無くなった瞬間気絶するんだけど。というか魔力が枯渇してて魔法を撃てる挙句、それなりの威力あるってことでしょ?誰が魔王になっても大丈夫だったんじゃない?俺より強い気がする……


 秋元奏の魔族でいう中とは魔族の階級のことだ。


 小、中、上、特しか知らないけど、これ以外にも階級があるらしい。


 中は下から2番目の階級だ。言うてそんなに強くない。で、一番上の階級が特で、クロムも晴樹も特だ。俺はこの試験を受けていないので何も持っていない。


 秋元奏って冷静な判断本当にできんの?って思うんだけど。だってさ、あんなにおっちょこちょいだったんだよ?そんなにすぐに変わるもんかなぁ?勿論、秋元奏だけ他の場所から来た人かも知れないから今の時点ではなんとも言えない。


 俺は視線を巡らせ、ある項目に目を奪われる。それは「前勇者の行方」という項目だ。前勇者は50年前くらいに魔王を倒したはずだ。こっちからすれば数年の出来事であるが……


 人間界の方では、勇者が死んだ。という記述はない。そして元の世界に帰ったとも、これは一体どういうことだろうか?勇者としての役目が果たされたのなら元の世界に戻ってもおかしくない。それに、もし元の世界に戻れなかったとしても勇者だ。人間からしたら国、ひいては世界までもを救ったのだ。そんな人を国から追い出すことはしないだろう。それに、強い人員を教育するのにとても適任だと思う。場合によっては座学の方も教えられるのではないだろうか?


 だが、人間の考えは違ったようだ。続きを読み進めれば「結論から言えば勇者は殺された」と書かれている。何か良くない出来事でもあったのだろうか?と考えを巡らすが、その考えは間違いだとすぐに気がつく。


 国王や上流階級の人間は政治に勇者が干渉するのを防ぎたいのだ。強力な力を持ち、尚且つ名誉もあるのだ。国民が勇者についていく可能性がないとは言い切れない。それに強大すぎる力を持った勇者を制御するのは相当な人材が必要だ。それを国が易々と用意できるか?と聞かれたら無理と答えるだろう。


 まぁ、制御出来ないから何らかの理由をつけて消したんだろうな。なんと残酷な……ま、今回は俺が人間界乗っ取るから安心しろ!消したりしないぞ!


 の前に戦争に勝たなくちゃ意味ないんだけどね。


 じゃぁ、頑張って強くならないとだな!魔力増やして、知識つけて……


「頑張る!」


「頑張るようで何よりでございます。引き続き頑張って下さいませ」


 返事が……き、聞かなかったことに、して?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る