第18話 一才の誕生日

 あれから時は経ち明日誕生日を迎える。


 俺は明日一才になる。やったね!これで0歳からおさらばだよ!0歳色々あって大変だったけど、楽しかったこともいっぱいあったなぁ。それと明日はルキアも人間界から帰ってくるんだ。


 正直に言っちゃうとルキアが居なかったからルキアが人間界に行ってからは何の騒動もなかった。帰ってきてからも何にもないといいのだが……そうも行かないだろうな。


 転生したばっかりの頃に勝手に聞こえていた心の声、あれは力を次の日に制御できてから使ってないなぁ。そういや、存在忘れてた。一年経ったこの日に思い出すなんてなぁ。


 転生したばっかりの頃が懐かしいよ。てんせいしたのにもかかわらずあんまり驚かなかったしな。こんな事現実でも起こるんだって思ったりもしたよ。


 でも、転生したのは素直に嬉しかった。これからまた新しい人生を歩めるんだって。


 そんな妄想に使っていたが、この辺りで思い出話は終わりにしようかな?


 それで何だけど、俺の一才の誕生日を盛大にやるのだそうだ。魔王としての責務を果たせている以上俺は正式な魔王であり、魔王の誕生日なら民も休みなのが当然だろうとの事だ。魔王を祝うため、民に感謝をするためにこちらからも向こうからもいろいろな出し物が行われる。


 こちらからは一部の人たちとのパーティーの開催。パーティーに来られない人たちの外での外での食事の担当になっている。俺が行うのはパーティーを進行することと盛り上げることだけだけど、クロムは忙しそう。いつもより数十倍大きな鍋とかで料理の仕込みをしている。魔王城にこんなのあったんだって感じだけど、普段騎士団で使っているものなのだそうだ。


 俺もパーティー開催2ヶ月前は大変だった。招待状を一つ一つ手書きで送ったのだ。配送は使い魔を使って楽〜に行ったが、とにかくかきすぎて手がボロボロだった。


 剣を握って豆が潰れるとかそういう感じの痛みじゃないから。慣れてなくて痛かった。こういうとき日本なら絆創膏とかあるんだろうな。と思いながら小さく切った布を巻いていた。クロムには


「布枚いて何になるんですか?」


 と散々言われたが、ヒールで癒してしまうのは嫌だった。ペンだこって頑張ったからできるものだ。だからその頑張った証拠を消したくなかったのと次こんなことがあっても豆が潰れないように皮膚を強くしておきたかった。


 体操選手の手のひらって見た事あるだろうか?


 手のひらが赤肌になり、薬指の付け根のあたり、太陽丘。中指の付け根辺り、土星丘。と呼ばれる場所だ。そこに固い豆ができている。豆は膨らみすぎると痛いからと言ってよく切っていたが、それでも豆になった部分は硬いし膨らんでいた。


 これは痛そうだけど、その人が頑張った証拠でしょ?だからその証拠を消したくなかった。


 そう、単純に俺のわがまま。てなわけで結構大変だったんだよ。


 俺が「成長」っていうよくわからない魔法を使ったのは魔界にいる魔族なら知っている事なので俺の姿が赤子ではなくても誰も驚かない。魔界では魔道紙というもので各家に情報の伝達が行われているらしい。日本で言う新聞みたいなものだ。こっちもお金を払って機械を買い、定期的にお金を払ってるから。


 ちなみに魔王城にその機械はない。正確には取り上げられただけどな。俺が魔王として政治を行えると知った瞬間取り上げられたらしい。詳しいことは知らないが、相当酷かったようだ。クロムが怒っていたのを何となく覚えている。


 でも、情報の発信源って多くが城からなんだよ。だから中心的な情報が魔道紙では開示されなくなった。城には基本関係者以外立ち入り禁止だし、内部情報は漏らせないようになっている。結局魔道紙はなくても城には問題ないことが分かった。


「ファルヴァント様、そろそろ出てきてください」


 そう言われたので俺は必要な物だけを持って部屋を出た。


 パーティー会場はホールだ。今日は賑やかな夜になりそうだな。それはそれで楽しみではあるけれど。


 時間は……6時ちょっと前。


「ではこのままホールに行ってパーティーを開会してください。その後は好きに締めくくってパーティーを盛り上げてくださいね。私はこれから料理を追加で作ってきますから」


「うん、分かった」


 俺はそう言ってそのままホールへ向かう。ホールへはここから5分程度だからすぐに着くだろう。同じ建物内で移動時間5分とかおかしいけどね。日本だったらありえないけどね。ここは異世界ですから、そんなところもあるんですよ?


 ホールのステージに繋がる部分に向かい、幕から出てステージの真ん中へと向かう。そこには拡声器……日本で言うマイクが置かれている。その前に立つと晴樹の声がして


「皆様ようこそお集まりいただきました。これにて魔王様の誕生パーティーを開催いたします。ファルヴァント様、一言お願いします」


「俺の誕生パーティーに集まってくれてありがとう。みんな楽しんでいってくれ。乾杯!」


「「乾杯」」


 そう言ってパーティーは始まる。


 俺はしばらく食事にはありつけなさそうだな。


 そう、今日の主役なわけで、お祝いの品を持った魔族がたくさん来るのだ。身分が高い順に来るのだが、東西南北の領地を収めている領主は基本的に身分差はないけど、その下はちょっとの差が厳しいかな?一個くらいが下なだけでおすごく下に見られたりするからね。それは相当性格が悪位場合だが……身分差関係なく話す人もいるよ勿論。


 魔族だって人間見たいな酷いこと考えたりするしさ、まさにルキアがいい例だよね。魔族って基本優しくて裏表ないけど、例外もいるってこと。


 そうだ、今日はリキアが帰ってくるんだからもうこっちにいるのかな?


 最初に来たのは北の領地を収めるルキアだった。


「良き日に祝福を、ファルヴァント様誕生日おめでとうございます。お元気そうで何よりでございます」


「其方も元気そうだな」


「はい、個人的なお話は後ほど」


「ああ」


 肩っ苦しいなぁ。まあ、しょうがないんだけど。


 次に来たのは東の領地を収めるリーナ。彼女はとてもフレンドリーだった。


「良き出会いに祝福を、ファルヴァント様、お誕生日おめでとうございます。私のことはリーって呼んでね。これから色々よろしくね!じゃあ、また!」


「はぁ……」


『しっかりなさってくださいね!』


 怖い、怖い、晴樹怖い!わかった分かったから俺のこと睨まないで!?


 次は西領の誠まこと。


「良き出会いに祝福を、初めまして誠と申します。ファルヴァント様お誕生日おめでとうございます。時の糸が交わ流時またいつかお会いできる事を心待ちにしています。では後ほど」


「ありがとう。また後で」


「失礼します」


 次は東領の驪妃斗りひと。


「良き出会に祝福を。魔王様、お祝い申し上げます。では、後ほど」


「ああ、ありがとう」


 次はミカ。


「ファルヴァント様、お誕生日おめでとうございます。これからもよろしくお願いします。時の糸が交わる時をお待ちしています」


「これからもよろしくはこちらのセリフだ。これからも頼んだぞ」


「はい」


 挨拶はこんな調子で続いた。3時間後くらいにやっとクロムが入ってきた。やっと自分の仕事が終わったのだろう。


 俺は3時間経ったらやっと食事にありつけた。食事はテーブルにとっておいたから食べるものはあるけど、違う場所にあるデザートが美味しそう。ま、デザートがあるのは知ってたから俺は料理を少なめに取っておいたんだけどね。それがバレたらニコニコといい笑顔で睨まれるだろうなぁ。でも、デザートはやっぱ別腹だから。


 ケーキ美味しいなぁ。これはタルトでこれはマフィン、ガトーショコラにチョコマシュマロ。モンブランも美味しそう。なので美味しそうなものは全部食べます!


 そして夕食は無事に終わった。後は問題の社交ダンスだな。誰かいい相手を探さないと……難しいよなぁ。

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