第12話 お疲れ様
「ファルヴァント様、この度は討伐の協力ありがとうございます」
「これも魔王の仕事なのであろう?問題などない。助けが必要な時はすぐに行く。すぐに行けない時もあるかもしれないが、その時は敵を早く倒してそっちに行く」
「それは、心強いですね」
「では、報告書は後日送りますね」
「ああ、わかった。また何かあったら手紙でもいいが、こっちにきて直接伝えてくれ、その方が状況把握が楽だ」
「ぜひそうさせていただきます」
「では、こちらで馬車の手配をしますのでこの部屋でお待ちください」
「いや、いいよ。このまま飛んで帰る。自分の訓練にもなるからね」
「晴樹様の思惑ですかな?」
「あはは、そんなところです。強くなりたかったら一緒に訓練しましょう!晴樹が師匠なら嫌でも強くなれます」
「それは遠慮しよう」
そう言って俺は玄関へ向かう。流石に窓から出るのは行儀が悪いからね。
「では、また何かあったら」
「何かなくて会いたいですけどねぇ」
「それもそうだな」
背を向けて上に視線を向ける。このんな事件みたいな用事で会うのではなくて、普通に夕食に誘うみたいな感じで会えないのかなぁ?そんなことを考えていた俺はルキアの声を聞き逃していた。
「あんなにしっかりしてる魔王様は初めてだ。側近として誇りに思うよ。だが、お前の父親は俺の手で殺されたとも知らずに呑気だな」
俺はいい気になって魔王城に帰った。
〈sideルキア〉
あーあ、今回馬車に乗ってくれなかったのは結構痛手だなぁ。馬車で帰る筈だから色々と用意してたのによぉ。時間がかかるように遠道で安全な道を指定し、何日かかけてファルヴァント様の胃の中に毒を入れてやろうと思っていたのに。それに寝込みを襲う作戦も失敗だ。全く、痛いことをしてくれるなぁ。
まだ生まれて3ヶ月とかじゃぁなかったっけ?それなのにあそこまでしっかりされちゃあ困るなぁ。俺はずっと魔王の名に憧れていた。小さい頃からずっとだ。だから名誉も地位もない家だが、魔王の元で働けるように自分の努力でここまでのし上がってきたんだ。
いつか魔王を殺して俺が魔王の地位に着くんだ。と。実際魔王でも不打ち攻撃なら勝てる。でも、真正面からの勝負では勝ち目はない。生きら俺が強かったって魔王の規格外さには勝てないのさ。
それで今回、子供でまだ小さいからうまく乗ってくれると思っていたのだが、それは違ったみたいだ。体は子供でも、考え方はある程度生きたものの感じだった。と言うことは、あの子転生者の可能性が高い。生まれたてで「成長」の魔法を使ったことや、しっかりした言動からの憶測だ。これは人間界に紛れ込んで勇者を教育するに限るな。
では、楽しみにしているんだぞ!勇者を立派な勇者に仕立て上げてやるからなぁ!
〈sideファルヴァント〉
俺は早々と魔王城に戻ってきていた。
「ファルヴァント様、どうでしたか?」
「結構楽しかったよ」
「それは良かったです。お怪我もなさそうですね」
その問いに俺は頷いた。
「今日は馬車で帰ってこなかったんですね。よかったです」
「なぜだ?」
「彼の方には悪い噂が絶えないのです。実際ファルヴァント様のお父様も過去に大変な目に遭わされていますからね」
そう言ってその時の状況を話してくれた。
お父様はルキアの言葉に甘え、馬車で帰ってきたらしい。その時に遠回りして帰ってきたから時間がかかったし、毒を盛られていたので体の状態も良くなかった。顔は青ざめていて、吐き気を催ししていたようだったと。馬車によったと本人は言っていたが、あれは毒によるものであると2人は考えたようだった。
そんな状態になって帰ってきたのか。馬車に乗ってこなくてよかった。馬車に乗っていたら俺もお父様みたいになっていたと言うことでしょ?マジ?俺、助かったってこと?ある意味晴樹に感謝って感じなんだけど。
「で、ぎりぎり回避したはいいけど、今度食事したいと言った、と。全く困った魔王様ですね」
「私は人間界に行って色々とやらなければならないことを片付けてこようと思っていたのですが……」
「いや、自分で巻いた種だ。それを自分で片付けるのも学習と言うものであろう?」
それはそうなのですが……と、不安そうにするクロムだったが、俺が自分で起こしたことだからちゃんと自分でやる。と言ったら、心配ですが、こっちも急ぎなので仕方ないですね。そう言って窓から外を見ながら
「1週間後に出発します。荷物の整理などもありますから」
と、本当に心配そうに言った。もしかして俺、信用されていない?嘘でしょ?信頼を得られるように頑張ってきたのに!
「本当に大丈夫。俺は自分のことは欠かさずやるから」
「いや、私が心配しているのはファルヴァント……ファル様のことではありませんよ。城の管理のことです」
「え?掃除とかしてくれる使用人いたんじゃなかったっけ?」
「あれ、元は騎士ですよ。というか、現在進行形で騎士のものもいますよ。なんせ皆さんコスプレとか言ってメイドに化けてるだけですから」
「……」
うん?コスプレ?この世界にもコスプレという概念があるのか!俺はな、重度のオタクだったから色々な子すぷれしたんだよ。あいにく体型は細身で、顔も(自称)イケメンの部類に入っていたから。
あの、最近流行ってた異世界転生とか転移とかの主人公に変身したり、女装したり……まぁ、色々やったかなぁ?おかげで家の雰囲気は明るかったなぁ。俺が不登校になったことで俺の母親が鬱になる寸前まで追い詰められたり、父親の魂が抜けたり、何度か大変な事件が起きたものだ。妹は兄が不登校になったことで存在感なし、が一気に人気者になったから、ありがとう、そして早く学校行けるようになれるといいね。って言われたのを覚えている。
妹が幸せなら俺はそれでいいかも、と思ってしまった。
父の職業はあまり金がもらえない職業だから俺が小説家として働いていたのは助かっていたみたいだ。俺の稼いだ金も生活費に回すようになったことで生活が楽になり、前みたいに「もやし」生活があることはなかった。
最初は俺の稼いだ金だから生活費には使えない、と言われたが、俺は引きこもりでニートだから使うことがないんだ。その代わり妹にいい物を食わせてやれ、と言ったら、親に泣かれた。正直どうしていいかわからなかった。
で、話戻すけど、あの可愛いメイドさんたちがみんな、というか殆どが騎士だと知ってちょっとショック……
「えっと、この城の管理は一体誰が……」
「私1人で……晴樹はいても邪魔ですから」
「クロム殿が異常なだけです」
す、すごい。火花が散ってる……
「話戻すけど、聞いてね。晴樹に掃除を任せるから、それと、騎士の方にも頼むから安心して行ってきていいよ」
「それなら、少しは安心して行って来れそうです」
「それはよかった」
そう言って。今日はもう寝る準備をして布団に入れられた。まだ夕食べてないから腹へった〜。そう思いながら寝たからだろうか、夢が食事の夢だった。
そして次の日の朝、俺はクロムがいない間に1人でやることを教えたもらえた。
そして一周菅が立ち、とうとうクロムの人間界出発の日になってしまった。1週間って長いようで短いんだな。
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