第9話 訓練後のいつもの日常

 外は明るい。俺は今が何日で何時なのか、そして俺がどんな状況なのか、わからない。俺の額に冷たいタオルが置いてあり、そばに置かれている水には貴重なはずの氷が入っていることから相当心配させたのだとわかった。


 俺はチリン、と呼び鐘を鳴らし、クロムか晴樹を呼ぶ。どちらか暇な方が来るだろう。


「ファルヴァント様、お目覚めになりましたか?」


「今日は何日だ?」


「訓練から3日経っています」


「今は何時だ?」


「今は午前11時です」


「俺の体に何が起こっていた?」


「簡単言えば遺物処理をしていました」


 詳しく聞けば、魔属性や闇属性といった魔族が必ず持って生まれてくる魔力の濃度が濃いらしい。その魔力の濃度が濃ければ濃いほど他の属性の魔力を受け入れられないんだと言う。


 魔力濃度が高かったせいでなかなか魔力になれることができなかったから余計な体力を使わないように気絶している状態だったと言われた。


「今日はもうお休みください。今はまだ魔力が体に残っていますから。明日には大丈夫だと思いますが、食事はここに置いておきますね」


 そう言って晴樹は部屋を出て行った。


 ご飯は消化の良さそうなお粥だった。上に梅が乗っている。


 おぉ〜!日本だ!お粥だ!と1人で興奮していた。


今思えば恥ずっ!って感じだけど。


 そして早く寝ろと言われたので早く寝ることにした。明日からは動けるんだもんね。暇な時間は読書に、だけど、本がないからね。この部屋から出るのは危険だし……


 反抗しないで寝た俺は早く起きてしまった。明日から行動可能になる。そして俺は暇なのが落ち着かない性分なのだ。なので今回の訓練方法について調べようと思う。結構体に負担がかかるものだったから気になったのだ。


 晴樹がわざわざ苦痛な訓練方法を行うことはないだろうから。これに何か理由があったんだと思う。


 次の日俺は真っ先に書斎に向かう。その途中でクロムに会ったから魔力の訓練について聞いてみることにした。


「おはようございます。いきなり倒れたと聞いて驚きましたよ。何があったんですか?」


 うん?俺が倒れた理由を知らない?と言うことは言わないほうがいいのか?念のため訓練で倒れたとは言わないでおく。


「俺もよくわからないんだ。聞きたいことがあるんだけど。魔力の訓練で聖属性の魔力を体内に入れるのって抵抗とかあるの?」


「え?あれは命を捨てる行為ですよ。あんなのやって耐えられる者はいないと思いますよ。私もこれに耐えている人物を1人しか知りません。でもそいつは魔属性と闇属性の魔力の濃度が低いので」


「へぇ」


 俺は命を捨てる行為を何も言われないでやらされたわけ?ちょっと俺の体大丈夫?


「俺用あるんだ。朝食でな」


「はい」


 書斎で俺は本を漁っていた。そしてお目当てのものはちゃんと見つけたぞ。


 わかったこととしては、あの訓練方法は素早く、手取り早く聖属性の魔力の耐性をつける為の訓練方法らしい。そして命の危険が伴うと言うのは俺のような魔力密度が高い人間だけだという。


 そして俺が思ったことを一つ言っていいですか?よく生きてたよ。俺の体、こんな訓練に耐えてくれてありがとう!


 訓練方法の話に戻るけど、属性の耐性をつけるのはじわじわとつけて行くのが普通で、今回のような件は異例らしい。相当耐性を早くつけなければならない時に仕方なく、といった感じらしい。そして目覚める時間はそれぞれ個人差があるらしく、平均は3日〜15日らしい。俺は3日だったから早いほうだったらしい。


 目覚める時間が早い人ほど魔力の対応能力が高いらしく。魔法の才能があると言われるらしい。


 晴樹はこれも狙いだったのだろうか?俺の魔法の才能を調べるのも目的だったのではないだろうか?


 その後は少し他の本も覗いてみたけど、それ以上の情報を得ることはできなかった。


 魔力に関する本で気になる記述があった。それはまるで写しの内容を否定しているように感じられた。


 本の内容では小さい頃から魔法の訓練をしないほうがいいとかいてある。だけど最後には小さい頃から魔力に触れることによって魔法の才能がなくても魔法を使いこなすことができるようになると記述されている。


 これは本当なのかどうかわからないけど、俺は信じようと思う。今俺の年齢は正確に言えば0歳。さからだろうか?晴樹も困惑するほどのペースで成長しているらしい。俺はみんなと同じように魔法を使って色々なことをしたい。って思ってやってるだけだからそんなにすごくないと思うんだよね。


「ファルヴァント様、朝食の時間です。いるなら出てきてください」


「ああ」


 俺は席を立ち、扉の前に立つ。この扉の前にいるのはクロム。そして、このまま扉を開けたら顔にドアが当たるだろう。それがわかっていて思いっきりドアを開けた。


バン!


「ぶへっ」


「ごめんクロム。そこにいると思わなかった」


「ファル様?私がここにいるとわかって扉を開きましたよね?」


「違うよ」


 ここまでは順調だったのになぁ。笑っちゃったから知ってたのバレちゃった。そしたらクロムすんげー怒るんだもん。俺腹減っちゃった。


「早く食べてください」


「早く食べて仕事しろって?いつも頑張ってるからそんなに書類の数多くないよ。だって俺の魔術の訓練が余裕持ってできるくらいだもん」


「そうですか。これからどうなっても知りませんからね」


「それは困る」


「困るんですか」


「困ります」


「なら書類を片付けてください」


 仕方ないので今日の分はちゃんとやろうと思った。それと少し多めにやろうかな?


そして俺は毎日の積み重ねをちゃんとしようと思った。なぜなら聖属性の耐性は落ちると聞いたから。


 そして毎日の積み重ねはあの気絶する訓練ではなく、魔石を使った訓練方法だ。最初は慣れなかった。魔力が変に入ってくる感覚が気持ち悪かった。でも今は、魔力の馴染みが得られている。こんなに簡単に魔力馴染むのは異常だと言われたが、俺は転生者でもう常人ではないのだちょっとばかり強い力を持っていても魔族だから、と言う理由で片付けようと思う。


 俺は元々人間として生きていて、こっちみたいに剣も魔法もない世界で理不尽な差別を受けながらなんとか生きていた俺だ。今、人間ではなく優しい、意外と心の闇がない魔族の元にいられることを俺はとても嬉しく思っている。強い、才能がある、と言うのは魔族だから、転生者だからという理由だけで十分だと思う。


 当然闇の力などを望むよ。

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