第8話 訓練

 無事に生誕祭が終わったことで俺は数日間の休暇をもらうことが出来、それにより俺の体力と精神力はすり減っていた。


 その理由は晴樹にある。俺が晴樹に魔法を教えて欲しいとお願いしたらすんなりとOKしてくれた。俺はクロムに散々止められた。だけどクロムの忠告を聞かずに訓練をしてもらった。


 晴樹はとても教えるのがうまいのだけれど結構鬼畜なことを言ってくる。魔法とはたくさん使えばたくさん使うほど精神が削れるという。それは体から魔力が抜けることにより色々な症状が出るからだ。


 体が鉛のように重くなる。や、眩暈がする。吸血鬼の場合は重度の貧血状態となる場合も。その他にも立ちくらみ、痛み、眠気、魔力の暴走などなど沢山の症状がある。俺の場合は結構最悪かもしれない。


 重度な貧血に眠気と物への執着だ。魔法を使いすぎると血が足りなくなって暴走する。これは理性でなんとかなるとかいう問題ではない。まだ意識があれば理性でなんとかなるかもしれないけど、大半の場合無理だそうだ。眠気、これは魔力が急激に少なくなることによって体内の魔力濃度が下がり、その魔力濃度を上げるために睡眠を要するのだそうだ。そしてものへの執着。これは単に自分の大切にしてきたものに反応するだけ。ま、自分の大切にしているものさえ近くになければ問題がない。俺が大事にしてるものは、唯一お母様の残してくれていた耳飾りだろうか?


 でもこれは俺が常時身につけているもので、取れなければ俺の視界にも入ることはない。だからほとんど問題がない。


 魔力不足になった時の俺の状態は息が荒くて通りかかった人は100人中100人が心配するレベルだ。


 理性により吸血行動を起こさないように抑えている。だが、目の前に血の匂いのする魔族や人間がいたとしたら理性は簡単に崩れて獣とかするだろう。


 この状態になるまで訓練はやめない。辞めさせてもらえない。俺は物凄い大変なことをやっているけど、ちゃんと日々の努力は成果に出ている。


 前まで長く使えなかった「ライト」の魔法が長時間使えるようになったり、大魔法の発動可能回数が増えたり。訓練はキツイけど確実に自分のものになっているという自覚があるので嫌だとは思わない。


 あれだけ優秀な先生に教われれば誰だって上達すると思う。心さえ折れなければの話だけど。


 訓練内容的にはそんなに多くないんだけど、弱点をついてそればっかりやるから挫折する人間が現れるんだと思う。晴樹は過去に弟子を育て上げたことがないとクロムに言われた。晴樹のように魔法が使えるようになりたいとはみんな思うみたいなんだけど、俺の訓練をしている様子を見てすぐに立ち去っていく。最初は笑顔で来るんだけど、帰るときは俺を哀れな目で見ながら帰るんだよ?おかしくない?俺は俺の意志で訓練をしてもらってるのに、あんなにされて可哀想とでも言いたいのか!


 俺がもし訓練を見にきた立場なら哀れな目で見るかもしれない。俺は魔力が不足して意識を保つことや、眠気を抑得ること、吸血衝動を抑えることに全力を注いでいるので自分がどんな姿になっているかも分からない。


 訓練中にいきなり晴樹がナイフを取り出して自分の腕を切ったときは驚いたし、俺の吸血衝動が強くなって自我を失いそうになった。


「な、なにをしているんだ?」


「ファルヴァント様は吸血衝動に耐えられるのかな?と思いまして、あなた様のお母様は旦那様の血以外に反応しなかったので反応しないのかと思ったのですが、まだ血を飲んだ相手が少ないからでしょうか?まだ反応しますね」


 お願いだからもうやめてくれ、甘い血の匂いがはなをくすぐって今すぐその腕に飛び付きたくなる。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


「そろそろ限界ですね。私の血を差し上げます。好きなだけ飲んでください。あ、死なない程度でお願いします」


「い、いの……」


「かまいません」


 その後はひたすら晴樹の血を飲んだ。死なない程度にんんでいいと言われたから結構飲んでしまった。その後晴樹は貧血になったのかな?と思ったけれど、普通にピンピンしていた。


 今度同じようなことしてきたらもっと飲んでやる!


 晴樹の血は甘くて美味しかった。んだけど甘すぎも良くないみたい。なに食べたのか聞いたら甘いものいっぱい食べたらしい。


 血の甘さは砂糖の甘さであって晴樹自身の血の甘さではなかった。次飲んだ時にまずかったらどうしよう。飲めない。


 無理やり砂糖菓子でも食べさせて血液を甘くしてやる。


 匂いからして晴樹の血はあまり美味しくないと思う。血の味より砂糖の味が濃い時点であまり即生活に気を使っていないのはわかる。それに多分だが、不眠症なのだと思う。若干の苦味がある。


 で、訓練は今回だけ若干ん元気なまま終わった。


 その次の日からは昨日血を沢山飲んだことが気に食わなかったのか鬼畜なメニューが増加された。俺はもうこんなきついの増やして欲しく中たんだけど。それに理由もわからずメニュー増やされるのは悲しいなぁ。


 魔力は使っただけ疲労が溜まる。それは前にも言ったと思う。魔力って疲労が貯まる以外にデメリットがあるんだよ。それは無詠唱が使えなかった場合好きが多い。俺は最初に覚える時から無詠唱だから覚えるまで時間はかかるけど、実践で使いやすいようになっている。テンパってミスさえしなければ死なないだろう。


〈12月7日〉


「ファルヴァント様、今日は勇者と対等に闘うための訓練を行います」


「なにをするの?」


「ただひたすら魔力に耐えてもらうだけですのでご安心を。他になにもしません」


 俺は思った。いつもの訓練よりもいつ位のではないか?と。


 だってそうでしょ?実戦で使うための訓練なのにキツくないわけないじゃん。それに今から訓練を開始するということはそう簡単に成し遂げることができない、もしくは小さい頃に覚えておいた方がいい、小さい子が習うくらい簡単のどれかだ。


 俺の予想は簡単に成し遂げることができないから早期からの訓練を、だと思うんだよね。晴樹の性格上、そんな簡単なことは初日に全部教えると思う。初日はただひたすら覚えるのに苦そうした覚えが……色々なことをやらされて、色々と調べられた。その過程で、アドバイスややり方なども教えてくれていたから。それが基本だったんだと思う。


「な、なんかものすごく大変そうなんだけど?」


「それは我々の命を奪うかもしれない聖の魔力に当たるからですよ。ファルヴァント様も知っておれられるでしょう?背に呑ま力は魔族を死へと導く毒だって」


「し、知ってるけど、なんで世の魔力に当たらなくちゃけないの?」


「こんな魔素が多い空間でずっと過ごしていたら生の魔力に耐えられないからですよ。我々魔族がこの地にいるのは傷を治している。とか、休息中。という時ですよ。魔素は我々の回復薬みたいなものです。人間で言う聖水とかポーションに近い形だと思いますよ」


「へ、へぇ。俺はそれにどのくらい苦しみ続けられるの?」


「意識を保っている限りですね。あ、気絶したふり、演技は無駄ですよ。私にはわかります」


 う、逃げる手段を失った。そのまま、魔力を受けいるしかないのかぁ。もう、無理でしょ!


 俺の体に繋がれた魔力の線は光を帯びている。こんな魔力を体に入れられたら死ぬかも。


「ではいきますね」


 そう言って魔力を流された。俺の体は過剰反応してその後は全く記憶がない。多分気を失ったのだろう。


 そして俺が目覚めるのは数日後となるのだった。

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