第4話 魔王の仕事

「ファルヴァント様〜どこですか〜」


「俺はここにいる」


 そう言って机の下から出てくる。俺はここで仕事をしていた。何をしていたかと言うと……机の足を直していた。俺は魔族に嫌われている為、新しい机の購入がなかなか出来ないのだそうだ。そう言われても…嫌われたくて嫌われているんじゃなくて嫌われたくないのに嫌われてるの!可哀想でしょ俺、お母様の方が大変な目に遭ってるんだろうけど。俺がこうしてる間にもお母様が苦しんでいると思うとじっとしていられない。早くお母様を助けに行きたい。俺のお父様は人間との戦争で俺が生まれる前に死んじゃったんだっ、て言っていた。


「何をなさっているのですか?」


「あのさぁ俺はこの机壊れたって言ったよね。そしたら君はなんて答えたんだっけ?」


 俺はなるべく魔王のように問いかける。


「直しておきます、と」


「そうだよねぇ、それなのにこれはどういうことかな?」


「ファルヴァント様はお父様に似てらっしゃいます」


 それは嬉しいが今はそうの話をしていないのだ。俺は机について話している。話を逸らさなくてもちゃんと聞き出すので問題ないですよ。


「それはお褒めの言葉として受け取っておきますが、話を逸らして良いとでも?」


「こう言うところまでそっくりです」


 このような会話をひたすら続けた結果。折れたのはクロムだった。そして罰として俺の書類仕事を3分の2やることになったのだ。俺はいつもよりも量が減ってご機嫌!


 でも、魔王の仕事とはそれだけではない。魔王城の掃除とかは使用人がやってくれるけど、魔物の排除は俺がやるしかないからね。騎士の方たちもいるけど、今は仕事が忙しいらしく城に帰ってきていない。多分だけど人間界の監視と人間の始末。なんでこんなことやってるのかは知らない。クロムがお母様の命令だと言っていた。少しでも魔王領に踏み入れば魔王軍にたかられてさようならなのだろう。想像するだけでも恐ろしい。


 書類仕事はあと少しで終わる。これが終わったら魔物狩りかぁ。俺は剣術を教えてもらっていない。教えてもらえる人がいないから前世の知識を使った。


 みんな素振りをやる。とか言うけど、それだけじゃ全然剣を触れるようにならないとわかった俺は木を切ったり、人形を切ったりと色々頑張った結果、たまたま帰ってきた魔騎士団長にまあまあと言う評価を頂いたのだった。


 嬉しかったな、あの時は。ただ、剣術が自己流だからいいのか悪いのかわからないけど、隙はないから大丈夫じゃない?と言うのがちょっと不安だった。


 それでもちゃんと魔物と戦えているし、怪我もしないで倒せている。だから大丈夫かなぁ?なんてね。


「お先に失礼します」


 わざと丁寧な口調を使い、威圧をかけておく。こうする事によってクロムは余計なことをしなくなるから。この方法に弱いと知ったのは最近だ。便利でよく使っている。


「ファルヴァント様、新しい剣でございます。今から狩に出かけるのなら試し切りをしてきてはどうでしょう。気になる点がありましたら気軽にお声をおかけ下さい」


「分かった。それとありがとう」


 そう言って剣を受け取り、玄関へ向かう。


 そういや俺の誕生日とかその他諸々のこと話して無かったね。


 俺の誕生日は10月25日、4時31分に生まれたらしい。この世界は時間で区切られていて、24時間が1日で、365日が一年。そして、この世界には誕生日を祝う習慣があるらしい。やったね!今日は11月25日ですね。ここに転生してから早1ヶ月ですか。この1ヶ月、書類と剣しかやってない…‥そして俺の誕生日まで後11ヶ月ある。まだまだ先だ。


 魔物は城に入ってきてしまうことが多いからその魔物を排除するのが俺の役目。俺しか入ってはいけない部屋とかに魔物が逃げてしまった時、本人なら問題ないからだ。


 俺が注げる魔力量が少ないらしく建物が脆くなっているらしい。その関係でドアを壊されたり、門を壊されたりと大変なのだ。でも、本来大人2人で補うはずの魔力を子供1人で補わなくてはいけないのは大変だ。俺の魔力は成長途中でまだ完全に魔力量が確定していない。だから魔力量が大人より少ない。毎日毎日何回も魔力供給を行なっているのだけれどこれが精神的に疲れるんだよね。


 魔力を注いだ後は精神力回復とか言う精神を回復してくれるらしい薬を飲んでいる。日本でいえば精神安定剤みたいな感じだと思う。俺も一時期飲んでたなぁ……作成者はクロム。俺が作ろうとしたら止められた。もしも毒になったらどうするのですか?と俺は材料を入れる順番を間違えたりしないし、クロムみたいにドジはしない。だからクロムより毒になる確率はないと思う。これが俺の意見なのだが……それに精神年齢は1ヶ月の子供じゃないんですよ?


 クロムが作った食事の方が毒だとその時は言いたかった。塩と砂糖を入れ間違えたり、調味料の量が倍だったりと大変なことになっていることが度々ある。


 おっと、魔物がいる。なるべく血が飛び散らないように倒さないとだもんな。


 俺は剣を鞘から出し、詠唱を開始する。結界魔法は誰が使っても詠唱が必要とされる。これだけは詠唱なしで発動できなかったらしい。詠唱部分の短縮はできたらしい。


「魔力よ。我が身を守り給え」


 自分の身は守ってないですけどね。


 結界で俺と魔物を囲む。こうすれば何か物が壊れることも、周りを気にすることもなく戦える。


 一つ補足するよ。結界は四角い形だから戦いずらいとかないんだ。これは俺のアイディア。


 向かってくる魔物の心臓部を狙って剣を突く。そうすれば大体倒せるから。


 魔物は悲鳴を上げながら崩れていく。魔物は死ねば体が崩れる。その原理はわからないが、魔物の体が魔力でできているからだと俺は思っている。


 残ったのは魔石だけ。でもこれは使い道が沢山あるから問題ない。


 この作業をひたすら続けて、自室に戻り、夕食を終えれば今日はもう休んでOKだ。


 最近起きている幽霊事件の解決もしなくてはならないが、今日は休むことにした。


 この日の夜は幽霊がファルヴァントの部屋に来たが、ファルヴァントは無意識に幽霊を倒してしまった。寝ている時、本能で動くのはすごいことらしい。

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