やみ

 花は燃えていた。

 鬱屈を浴び、劣等の礫を頬張りながら。愚かな人々がお互いの唾でお互いの顔を汚し合うその前で。

 私はただ、眺めている。

 胸はざわつき、ゾッとするほど冷たい汗が背中を流れていく。もうここから去ろう、と思った。

 しかし、どうしてだか、視線を逸らすことができない。こめかみは酷く痛み、私の身体は震え始めた。


「なぜ、笑っているの?」

 真っ黒な幼い瞳がこちらを見ていた。

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