それは私ではない
私の筆跡で、私ではない誰かの感情が綴られているルーズリーフ。を、小さく小さく小さく、小さく、小さく、小さく、ちぎっていく。アフォリズムをまるごと呑みこむ。脳が高尚に生まれ変わる。名文。は、吸収されずに私の顔を覆うようにぴたぴた貼り付いていた。
冬の風が窓からやって来て、紙屑は舞う。剥がれ落ち、模倣の詩は、雪となって六畳間に降り注いだ。私の体温を持たぬものたち。は、地に落ち、畳の上で哀しくチカチカと点滅したあとに消え、全てがどろどろになる。
バインダーが
溶けだし
鉛ぴつが溶け
だ
し
爪がとけだ
し
し しん
ぞ
う
が
と け
だ/……だ、だ、
し
し/
ぬかるみの身を日向に横たえ、ちらちらと揺れる空気を眺めていたら
どんどんどんどん青い世界が現れ、歯車が視界を塞ぎ、
自然な流れで、
転、
落。
輪郭はすでに曖昧になって、なって、なって、い、る。あいまい。そう、あいまい。血は沸騰し、その手触りを味わう。ざらりとした、美しくも、心地よくないそれは、非常に生臭く、それでいて真実だった。胃が疼いて、嘔吐き、舌は痙攣し、あまりの苦しみに喉を裂いた。熱を持った眼球が、ぽとり。
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