第158話 へし折る行為※

 ※大人向け表現あり。ご注意ください。

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 カタン、


 階下のドアが開く音に、ビビははっとする。

 人の気配に、視線を動かし、そしてカリストと目があった。


 まさか、フジヤーノ嬢が?


 身体を起こそうとしたビビの腕を、カリストの手が掴む。

 そのまま視界が反転した。

 「えっ・・・?」

 ベットに押し倒され、背中には柔らかなシーツの感触が。唖然とするビビの耳元にカリストは唇を寄せる。

 「しっ・・・」

 慌てて息を止めるビビ。

 階下から激しく女性の言い合う声が聞こえる。


 誰?とビビが目線でカリストに問えば、カリストは

 「悪い」

 ビビの両手をとり、その指先を絡ませる。そして困ったように謝罪の言葉を口にした。

 「少し我慢して」

 「なに・・・を?」

 言いかけた唇を塞がれた。


 *


 「あなた、いい加減にして!不法侵入で騎士団を呼ぶわよ!」

 「あなたまで私とカリスト君の邪魔をするのね?カリスト君の体調が回復しないのは、私が傍にいないのが理由だってことを、何故理解してくれないのかしら!さては、あなたもお義父さまと一緒で、あの女に嘘を吹き込まれたのね!」

 「勝手に義父呼ばわりしないで!不愉快だわ。妄想は大概になさい!」

 バタバタ階段を駆けあがるけたたましい音と振動が続き、バタン!と勢いよく寝室の扉が開く。

 とても病人のいる場所で、やる行動とは思えない。


 「兄さん!」

 「カリスト君!」


 「「具合は?」」


 と2人同時に声に出し、次の瞬間同時に固まった。


 「んっ・・・、」

 ベットの上で濃厚に絡まる男女の姿が飛び込んでくる。


 *


 「さ、サルティーヌ様・・・っ」

 押し倒されたまま、ビビは真っ赤になってカリストを見返す。


 ちょっと我慢して、と言われた。

 何を、と聞き返そうとする間もなく、唇を塞がれた。舌を絡められ、吸われ、抵抗する隙さえ与えられず、玩弄される。


 ちょっと、どころじゃない。

 頭の中が真っ白になる。一体なにが起きたというのか。


 「ごめん、触るから」


 カリストは囁き、あっという間に上着はたくしあげられ、頭から抜くようにして床に投げ捨てられた。


 「やめ・・・っ」


 パチンと指を鳴らすように、背中の下着のホックが外される。

 うわ、手慣れている??と感心する間もなく、腕から引き抜かれた。

 「待って、あ・・・、」

 

 「胸、綺麗だな」

 囁かれ、ビビは赤くなる。

 「うンッ・・・」

 なんでこうなった??


 バタン!とドアが勢いよく開き、誰かが押し入る気配がする。

 が、与えられた刺激に翻弄されて、ビビは唇をかみ、目を固く閉じた。


 *


 「なっ・・・」


 男は豊かな女の胸を両脇から包みあげるようにし、その谷間に唇を落とす。

 女は両手を口元にあて、声を堪えながら喉をそらせ、震えていた。

 「・・・っ」

 男は顔をあげ、口元を覆う女の両手を片手で難なく外すと、もう片手で背ける女の頭を抱き抱えるようにして唇を耳元に寄せる。


 「ビビ」


 男がささやく。

 「口、閉じるな」

 言って、舌で女の唇をそっとなぞる。

 薄く開いた唇をこじあけ、深く唇を重ねた。

 「ん・・・っ」

 「舌、出して」

 「・・・う、」

 苦し気に女は眉を寄せ、もがいていたが・・・やがて力を抜き、受け入れるように外された腕をそっと男の背中に這わす。

 隠すようにかけられたシーツの中で、二人の身体が絡まり合う。時折漏れる生々しい喘ぎ声が。肌がシーツを滑る音に交わり、唖然と立ち尽くす彼女らの耳に届く。


 「あ、カリスト君・・・っ」

 目の前で繰り広げられる濃厚すぎるベットシーンに、フジャーノ嬢の意識は吹っ飛ぶ寸前のようだ。


 顔をあげた男が、こちらに視線を向け、ゆっくり上半身を起こす。

 その鍛えられた完璧な肉体を惜しげもなく晒し、ぺろり、と薄い舌が情事の余韻を味わうかのように・・・濡れた上唇をなめた。


 それを目にしたフジャーノ嬢は、手のひらで口を覆ったままヘナヘナとその場に崩れ。その顔は真っ赤になって目は潤み、今にも泣きそうだった。

 一方、もう一名は赤面しながらも気丈に足を踏みしめ、男を睨み付けている。


 「・・・いくらなんでも、悪趣味だわ」


 吐き捨てるように言う女性に、カリストはニヤリと笑う。


 「なんとでも。勝手に押しかけてせっかくのイイところに乱入する方が、よっぽど悪趣味だろ。なんなら、最後まで見学する?」


 ち、ちょっと待って・・・!


 濃厚なキスにぼうっと意識を飛ばしていたビビは、はっと我に戻った。

 扉に背中を向けているので、こちらを向く彼女たちがどんな表情かはわからない。

 一人は声からして、フジャーノ嬢らしかったが、もう一人のキツい口調の女性は?

 起き上がろうとするビビを、素早くカリストが被さるように押さえつける。

 「じっとして」

 もがくビビを背中から抱きしめるようにして、長い髪を掻き分け、うなじにキスを落とした。

 「あん・・・っ」

 思いがけず甘い声を漏らしてしまい、ビビは赤くなって両手で顔を覆う。

 「いい声」

 ここが弱いんだ?カリストはクスリ、と笑ってうなじに軽く歯をたてた。ビクッと震える背中にゆっくりとなぞるように、ついばむキスを落としていく。

 「やめ・・・あっ・・・、」


 やりすぎでしょ!病人のくせに、なに考えて・・・!


 「やめて!」

 フジャーノ嬢は悲鳴をあげた。

 「嘘よっ!信じないわ、カリスト君!どうして、そんな・・・」


 「まだわからない?」


 顔をあげ、ビビの髪に唇を寄せながら、視線だけをこちらに向ける。そのゾクリとする色気を宿した視線に耐えかね、フジャーノ嬢はぶるぶると震え、言葉を失う。


 「お前相手じゃ、勃たないんだよ」


 *


 叫ぶような泣き声をあげ、フジヤーノ嬢は部屋を飛び出して行く。

 それを追って出ていく足音が聞こえ、やがて部屋に静寂が戻る。


 ふ、と頭上でため息が落ち、そのままずるずるとカリストはビビに覆いかぶさってきた。

 「・・・もう、限界」

 助かった、と耳元で声が聞こえる。

 「いえ・・・その、大丈夫ですか?」

 ビビはおずおずと身体を起こし、捻るようにしてカリストを見上げる。

 いきなり上着(のみ!)をはぎ取られ、睦ごとの真似をされて、頭が真っ白になった。あれだけ弱まっていたにも関わらず、あのフェロモンはすごかった。危うく・・・その気になるところだった、とビビは冷静に自身を分析する。


 カリストの顔が赤らんで汗がにじんでいるのにはっとして、両手を伸ばし前髪をかきあげながら額をつけた。

 ああ、やっぱり熱、あがっている。

 「せっかく熱下がったのに。とりえず上着着てください」

 「・・・お前のその切り返しが冷静なとこ、男としてどうとったらいいか悩むよ、ほんと」

 普通はもっと戸惑ったり、平手打ちくらいするだろ、と言われ、ビビは眉をひそめた。

 「病人相手に暴力は駄目でしょう」

 ベットから降りようとするも、カリストに覆いかぶさるように抱きしめられて、身動きがとれない。

 すり、と胸に顔を埋められ、甘えているような仕草にどきりとする。


 「お前の身体って・・・柔らかくて気持ちがいい」

 本当に気持ちよさそうに目を細めて甘えてくるから。ビビは思わずそっと頭を抱き、サラサラした黒髪を指先ですく。

 触れ合う肌が気持ちいい。自分を抱く腕にそのまま身を任せそうになるのを叱咤し、ビビは冷静を装いカリストの背中を軽く叩いた。

 「あの・・・そろそろ離していただけると・・・」

 「このまま、抱かせて」

 「馬鹿な事言わないでください」

 そんな体力ないくせに、とため息を混じりに言うと、カリストは小さく笑った。

 「ほんと、動じないよな」

 ため息をはき、カリストの腕がゆるむ。ビビはベットから降りると、投げ捨てられた下着と上着を身につける。


 「・・・うわ、」

 胸元に目を落とし、ビビは愕然とする。数ヶ所に散らばる、赤いキスマークに熱が上がる。

 「ちょ、なにいつの間に・・・」

 「ごめん・・・お前、胸が綺麗だから、我慢できなかった」

 振り返ると、うつ伏せの体勢のまま枕にもたれて、気だるげにこちらを見るカリストと目が合う。

 熱が上がっているせいか、少し上気して潤んだ目元が悩ましく。その色気にあてられ、不覚にも胸が高鳴った。

 「な、なにを言って・・・」

 赤くなるビビに、カリストは力なく笑った。

 「褒めてくれ。今度はちゃんと見えない場所につけたから」

 ねえ、と声をかけられビビは赤くなりながらも、ジト目でカリストを振り返る。

 「・・・なんですか?」

 「忘れないでね?俺の言ったこと」

 「・・・」

 「護るから、」

 「・・・っ」

 「・・・・」


 そのまま疲れはてたようにカリストは目を閉じた。

 身支度を整え、ビビはため息をつくと恐る恐るベットへと近づく。起きそうもないことを確認すると、むき出しの肩にそっと掛け布団を引き上げる。少し汗ばんだ額に手をあて、前髪をかきあげた。

 無茶して動いたから、少し熱あがったか・・・まったく。


 そっと手のひらを額にかかげ、口中で唱えると青白い光が漏れ、カリストを包み込む。

 「なにが、護る、よ。病人のくせに・・・」

 ビビはそのまま指先でカリストの白い頬を撫でる。

 でも・・・抱きしめて護る、と真剣に伝えてくれたあの目に嘘偽りはなかった。

 向き合う、と決めたから。逃げないと誓ったから。だから、今は自分を求めてくれたこの男の心を護りたいと思った。

 

 「・・・わたしも、あなたを護るから」

 そのこめかみにそっと唇を寄せる。

 早く、元気になって・・・


****

 言い訳@カエル

 

 ブッ飛んでいる言葉の通じない勘違い女?の心を折るにはなにが効果的か?と考えまして(;^ω^)

 目の前でキスしたくらいじゃ動じないだろうということで、少々濃厚になってしまいました。

(ちなみに、両者下はちゃんと履いています(笑)

 これはあるアーティストのプロモーションビデオのウフフなワンシーン♡を、カエルなりにイメージして文字起こししてみました。

 楽しかったけど、やりすぎた感が・・・汗

 どうだろ・・・これってアウト、なのだろうか。ビクビク

 このまま残せることを祈って・・・土下座→書き逃げ

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