第7話 金色の目の魔銃士

 「・・・、魔銃士・・・?」

 

 「何者だ?」

 男の声と重なる。

 

 「見たところ、旅人のようだが。ここの遺跡は一般人の立ち入りはできない」

 男の声は淡々として、冷たく突き刺さるようだった。

 びくり、と身をすくませ、ラヴィーを抱きしめる腕に力がこもる。

 自分に向けられる威圧感と、下手な動きをすれば即座に攻撃されそうな緊張感。まるで鋭い刃物を突きつけられているような恐怖に、悲鳴をあげそうになる。

 

 「す、すみません・・・わたし、気づいたらここにいて・・・その、この子・・・ラヴィーに会って・・・」

 声が震える。目頭がまた熱くなって、気づけば涙が溢れていた。ラヴィーが低く鳴きながら、頬を流れる涙をぬぐうように、ぷよぷよした手が触れ、涙が吸い上げられる。

 「すみません、人に会えて・・・ほっとしちゃって・・・すみません」

 ラヴィーを抱き締めながら、しゃくりあげ、ひたすら何度も頭をさげる。男は黙ってこちらを見下ろしていたが、

 

 「立てるか?」

 

 間近で聞こえる声に、びっくりして顔をあげる。男は膝をおり、こちらと目の高さを合わせたようだった。

 目が慣れたのか・・・自分を見つめる目と視線が合う。


 金色・・・の目?

 どこかで、見たような。


 あ、はい、とラヴィーを地面に下ろし、立ち上がろうとするが。


 ・・・足に力が入らない。


 安心してしまったのか、もしくは男と対峙して緊張しすぎたのか。糸が切れたように身体が言うことをきかない。

 なんとかして動かそうともがくのを見ながら、男はため息をひとつ。

 すっ、と両脇と膝裏に腕を通され、次の瞬間ひょいと軽々と抱き上げられていた。


 「ひえっ!」


 こ、これは俗に言う、お姫様だっこってやつ?


 「あっ、あの、あのっ!」

 「急いでいる」

 そう一言告げると、スタスタ歩き出した。男は背が高いのか、地面のラヴィーが小さく見える。ラヴィーはピョコピョコ後をついてきたが、男の歩くスピードに付いていけなくなり・・・暫くすると姿が見えなくなった。

 ああ、離れてしまう・・・心配しながら男の肩から背後を伺い見ていると

 

 「ヘム・ホルツは縄張りから外に出ることはできない」

 心配いらない、と言葉短く告げられ、諦めて息をはく。

 縄張り、とはこの危険な場所なのだろうか。こんな場所にガドル王国の平和のシンボルでもあるヘム・ホルツが、生息しているなんて考えられないのだが。

 男に色々聞きたいことがあったが、なにから聞けばよいかわからない。


 ここは、どこなんだろう?

 何故、自分はここにいるんだろう?

 もう、根本的なところからわからない。


 考えているうちに、とろとろと眠気が襲ってくる。


 あ・・・駄目だ、眠い。


 見知らぬ人に身を任せたまま、寝ちゃうなんて、そんな失礼なことしちゃ・・・


 ・・・。

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