第10話 E級ダンジョン
俺は賢者の失われし部屋を出ると、そのまま速攻でダンジョンを出る。
ダンジョンを出ると、何故か外は真っ暗になっており、ダンジョン管理局の近くで朝霧さんが車に背を預けながら何かを待っていた。
俺は何を待っているのか気になったので話しかけてみる。
「何してるんですか、朝霧さ―――」
「それは此方のセリフです。F級ダンジョンの攻略に一三時間も掛かるなんて幾ら何でも遅すぎです。梨花様が大変心配して居られ、何百件ものご連絡が私の携帯に掛かっております。一体何をしていらしたのですか?」
怒涛の勢いで放たれる言葉に俺は思わず顔を引き攣らせて後ずさる。
しかし朝霧さんの言っている通り、全て俺が悪い。
……まさか賢者の失われし部屋に九時間いたとは。
確かに来た時は太陽が照っていたのに今ではその姿を全く確認できない。
しかし俺の体感時間では長くても五時間程しか経っていないと思うのだが……あの部屋は時間軸が違うのか?
時空魔法があるくらいだしありえないことも無いどころかほぼ確定だろうな。
でもめちゃくちゃ要らない効果だな。
だって部屋の時間を外よりも速くするならまだしも、遅くしたところでなんの意味もないだろうに。
俺がそんな事を考えていると、俺に電話が掛かってきた。
勿論相手は妹の梨花。
俺は物凄い出たくないと言う欲求に襲われるが、きっと何回も掛かってくることが目に見えているので、観念して電話に恐る恐る出る。
「も、もしも―――」
『お兄ちゃん!? 一体何してたの!? 朝霧さんがそんなに時間の掛からないダンジョンに行ったって言ってたけど!?』
「ちょ、ちょっと不測の事態に陥ってな……」
『…………何があったのか教えてくれるんでしょ?』
「私も聞いておきたいですね。今後このダンジョンの危険性を改めないといけないくなるかもしれなくなりますので」
その言葉に梨花だけでなく朝霧さんもが身を乗り出して聞こうとしてくる。
俺は少し気まずく思いながらも説明する。
ダンジョン内の全てのモンスターを倒していたこと。
それは『賢者の失われし部屋』と言う隠し部屋の解放条件だったと言うこと。
そしてボスを倒そうとしたら、シークレットボスと言う特別なボスだったこと。
何とか倒したら隠し部屋に入れて、とあるギミックを解けば《賢者の魔水・時空魔法・魔力親和》の報酬が貰えたこと。
賢者の魔水によって魔力が一〇〇〇増えたこと……などなど。
「『…………』」
話し終えた後、二人はうんともすんとも言わないもぬけの殻へと変貌してしまった。
梨花は電話越しのため、どんな顔をしているのかは詳しく分からないが、朝霧さんの常に無表情な顔が驚愕に目を見開いて口が小さく空いているのを見るに、相当な事をしでかしてしまったらしい。
しかし流石大人と言ったところで、直ぐに持ち直すと「ダンジョンの事のみを報告してきます」と言って直ぐに車を走らせて何処かに行ってしまった。
「…………帰るか」
一人取り残された俺はトボトボと帰路についた。
***
――次の日――
今日も俺はダンジョンに行こうとしていた。
だが昨日も事もあり、
「絶対に遅くなりすぎないでね」
と何度も何度も耳がタコになるほど言われたが。
「ダンジョンなんだからそんなの分からないのにな……」
俺は小さく溢しながらも目の前にあるダンジョンを見上げる。
今回のダンジョンは前回と違って一つランクが上のE級のダンジョンだ。
今回は草原の様な見た目で、出てくるモンスターはオークやゴブリン、ウルフなど色々な種類がいる。
まぁどれも弱いが群れると厄介なのでそれだけには気を付けないといけないらしい。
「今回は隠し部屋があっても一度見送るか……」
今回も帰るのが遅くなったら梨花に何を言われるかわからないし、そもそも今回は前回手に入れたスキルの実験をするだけだし。
俺は少しワクワクしながらダンジョンに入った。
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