第4話 創造(コンビネーション)だよ 2
校庭から鉄の柵に身を乗り出して外を覗くと、諸島といわれる島々に囲まれる暗く濃い海があり、沢山の大型建造物がそのなかに立っている。その一つである旧中学校舎に張り付いている黒い大きな恐怖を覚える物体があった。轟音はそこから聞こえているようだった。よく見るとそれは船の形をしていて、軍艦であるということが分かった。旧中学の建物の屋上から海へ飛び降りる者、軍艦から海へ飛び降りる者が認められた。どうやら軍艦に攻撃を受けて徐々に沈没しているらしいということは僕にも分かる。それと同じように周りの生徒たちが騒ぎ始めた。
少しすると、校庭の真下近くの海に一隻の救命艇がスピードを上げて横切ると同時に少し過ぎたところで急停止した。その時僕と三崎くんは黙ってそれを見ていた。その舟の中には数人の人間がライフルのようなものを持って乗っていた。すると舟の周りに大勢の人間が四肢を水の中で揺らしながらゆっくりと泳いできた。校庭の上からのそれを見るとなぜかアメンボだと思った。舟にアメンボが近づくと救命艇から爆発音が鳴り響いた。腕が砕けたアメンボが暗い海に沈んでゆく。僕らは何匹も沈んでいくアメンボに呆然としていた。いくらかが校庭の僕らに気づいて、下まで来て助けるように必死にもがきながら叫んでいる。僕らは皆どうするべきかと顔を見合わせて何もしないでいる。
僕の頭の中に熱い怒りのような衝動が湧いた。その怒りが喉では抑えきれなくなって「皆、耳をかすな。早く家に帰るんだ。」「先生にそういわれただろ。」
恐怖をもって海を眺めていた者も学校アウトローも僕の憤慨に満ちた言葉に納得して、アメンボを水たまりのなかに残して、田んぼのある海と反対側の市街地に歩いていった。
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