第3話 創造(コンビネーション)だよ1
南向きの教室の裏側に一二年生の教室を背骨のように繋げる廊下が続く。
陽が傾き始め北側の廊下が照らされ始めた頃、そこにはまばらながら人がいてそいつらは学校の大集団から少し外れたアウトローを僕に感じさせるのだった。
いつからか僕もその学校アウトローの内側にいたのだった。学校の規則に背くという少年の僕らにとっては重い行為は、また同時に僕らに生まれて初めての人としての独立を感じさせるのだった。
昼過ぎのこの時間は皆各々の教室の掃除に熱心だ。僕も少し気になってその教室に赴くと、(自分の教室なのだから赴くというのは可笑しいが)
話す皆が皆「時任がいるから今日は長い」と愚痴をこぼしている。いつも。
担任なのだから仕方がないというのが僕の意見だが、僕はやはり体制側ではなく学校内の小市民側なのでいつも彼らへの同調でその場をしのぐ。
しかし、本当にその日は掃除が長引いた。教室からいつもの、掃除終了の心地よいざわめきが聞こえる時間を過ぎて、歓声や奇声があがった。何事かと思うと、担任が今日はお前たちは早退だという。決して海の方を覗くな。
たった百二十人の全校生徒が興奮気味に友人と喚き散らしながら、玄関へ階段をくだっていく。僕はその波にのまれながら自分が何人にも分裂していくのを感じた。それは僕aであり僕bであり僕cであった。あるとき僕は僕aとして友達の三崎と話をして、またある瞬間は僕bとして時任がいった不思議な警告について階段を下りながら考えるのだった。
皆が校舎を出た時、時任の思惑は失敗したのだと僕は無根拠ながら悟った、アスファルトの校庭の下のほうから聞こえる轟音で。
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