第8話 ナデタ!
「本当に離してください。イヤなんです。」
私は抱きしめる公爵に言う。
「だいたい、私がイヤならもう抱きしめないって昨日言われてたじゃないですか。」
公爵は私を離さずに言った。
「そうだよ。初対面だからって言われてね。だけど、ご飯を食べさせたし、裸の付き合いをした仲じゃないか。こんなにソフィアとは親密なのに、もう初対面じゃないだろ。」
(あれは、貴方が勝手に)
私はザックバード公爵を睨みつける。ただ本当に公爵家のディナーは美味しかった。お風呂も気持ちよかった。最高なのに、なんか嫌。本当に嫌。
「怒った顔も魅力的だね。そう言えば、ソフィアの事を調べてたら面白い事が分かったんだ。俺の等身大の人形を買ったらしいね。あれはなんで買ったの?」
「あれは、お・・・・」
(あれは、お嬢様が買ったものなのに)
ザックバード公爵が戦争から帰還してすぐに、市井でも人気が爆発した。等身大の人形は、王都で最大規模の人形店で10体限定で販売されたものだ。ソフィアはマーガレットお嬢様に言われて、発売日の前日の朝から店に並び、購入した。恥ずかしくてその日は男装し名前も変えて購入したのだが、後日ザックバード公爵より店舗に抗議が入り店が自主回収した際に、ソフィアの購入した人形は返品せずに済んだ。お嬢様はひどく満足され1体しかない激レア品だと毎日一緒に寝ているようだった。
お嬢様が何をしているかは本当に考えたくない。ただ、ザックバード公爵の人形を手に入れてから、お嬢様は部屋に人形と籠り夜な夜な悩まし気な声を出しているのは、使用人全員が知っている。
ザックバード公爵は訝しげに私に聞いてくる。
「お?」
(ダメ。誤魔化さないと、お、お、お、)
「思い出の、お宝にしようと、思いっきりお触りをしていました。ごめんなさい。」
私は慌てて誤魔化した。
「ふーん。そうなんだ。俺の人形で回収できていないのは、ソフィアが買ったものだけなんだ。いつもどうしているか、実践してみてよ。思いっきりお触りだね。」
私は、今ザックバード公爵を撫でている。
私の主を教えるか、等身大の人形と実物の違いを全部答えてと言われた。
(そんなの、知らないよ。私はお嬢様に言われて買っただけなんだから。)
公爵はなぜか服を脱いで、私の手を掴み触らせてくる。
私は恐る恐る公爵を触る。筋肉質で厚い胸板。引き締まった腹筋。想像以上に逞しい上腕二頭筋。購入した等身大の人形は、箱詰めされたまま、屋敷に運びお嬢様へ引き渡した。人形の実物に私は触った事がない。初めて触れる異性に私は恥ずかしくて、ドキドキする。
ザックバード公爵は、私に言う。
「もっと強く触っていいよ。それじゃあ人形と俺の違いが分からないだろ。本当にソフィアの主に渡したんじゃないの?」
私は恥ずかしくて顔を赤らめながら答えた。
「あの、私そんなに覚えてなくて、、、」
ザックバード公爵は、笑いながら私に告げた。
「そう、俺も回収してから確認したんだけど、身長は同じだけど、いろいろ違う所があったんだよね。特に服の下は結構違ったな。ソフィアが人形を持っているなら、一番違う所なら分かるよね。それさえ教えてくれたら、ソフィアを疑うのはやめるよ。」
「一番違う所?それなら。」
(一つだけ答えられたら終わりそうだ。一番違う所ならと、私は頷いた。)
そして、私はザックバード公爵の物を涙目になりながら両手で包み込んでいる。
「ああ、いいよ。しっかり触って。どう?わかる?こうやって動かして。」
私の両手の上からザックバード公爵の大きい手が添えられて、一緒に動かされる。
(なにか言わないと、人形との違いを答えないと)
「ああ、ソフィア。いいよ。気持ちいいよ。もっとして。」
ザックバード公爵は気持ちよさそうに私を見る。整ったザックバード公爵が恍惚として、私を褒めてくる。
私は魅入られたように両手を動かし続けた。
滑らかな肌触り、戦争の英雄が私の手の中で悶えている。
「ああ、いい。ソフィア。ソフィア。」
勢いよく飛び出した欲は私の顔から胸にかけられた。私ははっと我に返り、ザックバード公爵へ告げた。
「人形は撫でても、何も出ませんでした。」
その答えを聞き、ザックバード公爵はうっとりと笑った。
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