第7話 ユメミタ!
私は浴室から出て、用意された服に着替えた。
シルクのワンピースは私の肌を優しく包み込む。
脱衣所から居室に戻るとそこには誰もいなかった。
(あの変態は、どこにいったの?)
カメラで監視をするにしては、あっさりしている。
居室の奥には大きなベッドが置いてある。かけられているシーツや布団も今まで触った事がないほど極上品だ。
寝室の左右の壁にはそれぞれドアがあった。
不思議に思い、まずは左側のドアを開こうとする。
ドアノブを回すが、鍵がかかっているようで開ける事ができない。相変わらず鍵穴が無く、どうやって鍵をかけているのか不思議に思う。
右側のドアにも近づき、回してみた。そのドアはすぐに開き、先は広いウォークインクローゼットになっていた。
ジョンの小屋が入るほど広いウォークインクローゼットには、女性用のドレスに装飾品、バック、帽子、靴まで様々なものが取り揃えられている。気になり奥へ進めば進むほど、なぜかドレスや靴が小さくなっていく。最奥に用意されていたのは幼児の服だった。幼児の服でも10着以上用意されている。
ドキドキする。
世の中には、女児を連れ去り閉じ込める変態がいると聞く。この部屋は豪華だが明らかに外に出れない構造になっている。
(戦争の英雄が幼児誘拐監禁・・・)
新聞の見出しにザックバード公爵の端正な顔立ちが映った記事を脳裏に思い描く。
(気のせいのはず。)
天才、戦闘狂、残虐王、、、、、変態、監禁、幼児愛好家
(ダメ、考えすぎよ。この部屋は使われた形跡がないもの。)
そう、使われた形跡がない。ドレスや小物も全て新品に見える。どうして、使わない服飾をここまで集めているのか疑問に思う。そもそもザックバード公爵は10年間戦争へ行っていたはずだ。ここにあるものは、公爵が集めたものではないのか?
私は、ウォークインクローゼットから出て寝室のベッドに潜り込んだ。
柔らかく、ふわふわのベッドは私を包み込み、すぐに私は眠りについた。
『ママ、ママ、こわいよ、さみしいよ』
女の子の泣いている声がする。
『大丈夫だよ。ソニア。僕がいるよ。』
少年が女の子を宥めている。
『本当。一緒に寝てくれる?みんないなくなっちゃたの。』
女の子が甘えたように声を出す。
『もちろんだよ。毎晩会いにくるよ。ずっと一緒にいよう。』
そんな女の子に優しく声をかける。
『うん。ありがとう。約束だよ』
女の子は、男の子と手をつなぎ一緒に眠りについた。
『ずっと一緒だよ。僕の愛しいソニア。』
私は、温かいものにくるまれて気持ちよく寝ていた。
温かい。
大きな手が私の頭を撫でてくる。
頭だけでなく、背中やお尻も撫でてくる。
暖かくて大きな手。その手に触られた処から、私の体に熱が与えられ、とても心地がいい。
触られた処から、、、、
触られた?
私は、疑問に思い目を開けた。
そう、昨日も同じ事があった。
目の前には銀髪の端正な顔立ちのザックバード公爵がうっとりと私を見ながら、撫でわましてきていた。
「えええええ。」
とりあえず、私は両手でザックバード公爵の胸を押し離れようとする。
「おはよう。ソフィア。気持ちいい朝だね。ソフィアは朝から可愛いよ。」
全然離れない。
おかしい。むしろ下腹部がさらに密着する。
「離れてください。脚を回さないで。お尻を掴まないで。この変態!」
私は思いっきり公爵を罵った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます