第8話

 図書室にきてみると、まず最初に驚いたことがあった。本の大きさと並び的には違和感はないが、よく見ると本の表紙のタイトルは「ありがとう。」や「愛」、「いただきます」などのタイトルが多かった。もちろん現実でそういうタイトルの場合もあるだろうが、流石にこんなに似たようて端的なタイトルの背表紙が並ぶのことはないだろう。そして本棚を分けるための表紙も「日本文学」だとか「ライトノベル」だとかは書かれておらず、「友愛」や「恋愛」、「嫌悪」などの部類で別れていた。試しに一冊取って中身を見てみると、「昨日は友達と喧嘩してしてまった。仲直りしたいけど勇気がない。」や「明日は良い日になりますように。」などが書かれた1文の後に高校の生徒であろう名前が書かれてあった。


「ここにはこの所蔵庫の1番重要な言葉が大切に保管されている場所だ。この中で自分の名前が書いてあるページを見つけると四葉のクローバーの形をした羽を持つ蝶が現れる。それが問題の種だ。」

「つまり、その問題の種をこの大量の本の中から探せ、て?。」


「冗談よせよ。」と、しかめっ面をして弱音をグチグチ吐き始める顕斗。それがうるさいとも思えるが、内心私も似たような感情を持って、謎を解くどころか問題さえも見つからなかったらどうしようと頭を悩ませた。


「ねえ、どうしたら効率よく見つけ出せるかな?手がかりも何もない状態で探しては日が暮れてしまうわ。」


とりやえず、私達に関係がありそうな家族愛の部類を手当り次第探してみるけど、これだけでも大量にあってしかも1ページずつ目を通すのにとても時間を取ってしまうことが目で見て分かる。


「そうだねぇ〜。家族の部類でも沢山あるだろ?例えば『宇宙』とか『スポーツ』とか。遥架と顕斗にとって家族とかお母さんに直接繋がりそうなものを探したらどうだ?」


カンパの言う通り、家族愛の中でも本1つ1つの背表紙には一見家族とは関係がないように思えるタイトルが付けられていた。「遊園地」「海、山」など。その中でも適当に選んで開いて見てみるとタイトルに関するこの学校の生徒一人一人の何かしらの家族に関する言葉が書かれてあった。


「なるほど。」


と、私が納得したように言うと、カンパは満足そうに無邪気な笑顔でコクコクと頷いた。すると、顕斗が手に持っている一冊の本を横から見てピンと来た。


「顕斗、それ見せて。」

「お、おう。」


遥架は少々興奮気味な様子で声をあげるものだから、顕斗も少々慌てながら手に持っていた本を渡してくれた。私は「ありがとう。」と短く言い、その本を手に取り目次を見て探してからペラペラと思い浮かべているページを捲る。すると、黄緑色の画用紙でできたような四葉を見つけて呟いた。


「ビンゴ。」


―――・・・


 お花の1つ1つに言葉が刻まれているのです。花言葉の起源は一般的にトルコの「セラム(selam)」という風習が起源だと言われています。セラムとは、花や果物には詩句がついており、それらを贈ることで相手に気持ちを伝えるという風習のことを言うのだそうです。


 ―――・・・


「ビンゴ。」


開いたページから黄緑色の画用紙でできたような四葉が動き出し、蝶のようにパタパタと羽ばたき出した。頭上まで登った蝶は下から見ると絵本からでてきたような可愛らしい顔が覗かせる。


「寒波、あれ飛んでってるよ?」

「大丈夫だよ。よく見てみ。そしてさりげなく僕の名前で遊ばないでよ?」


カンパが無表情のまま淡々と話した矢先、四葉のような羽を持った蝶から黄色い光が真下を照らした。その光の中からゆっくりと形が現れたのは何種類かの花が入った花瓶と、クイズと思わしき紙切れが何枚か机の上に置かれてていた。


「さぁ、第1問だよぉ〜。この問題を解いた言葉はこの便箋の一番上にあるの空欄に当てはまる。」


カンパは小さな体を大きく動かして、宙を飛びながら簡単に説明して最後にニコッと笑う。それと同時に学校のチャイムが鳴った。謎解きゲームの『始まりのチャイム』私と顕斗はチャイムが鳴り終わるのを待ってから真剣に問題と向き合った。


『問題:お互いの部屋には3つのアイテムがあります。』


と、まず最初に書かれており、その下にはそれぞれ3つ、「遥架の部屋」「顕斗の部屋」という枠の中にイラストが書かれている。そのイラストというのは、


遥架の部屋:ドーナツとクレープとハチミツ

顕斗の部屋:ファイルとパソコンと名刺


そしてまた下に書いてあるのは、


『2人の部屋のアイテムには共通点があります。それに足りないものを花瓶の中から選ぼう!』


とのこと。花瓶には、ピンクのチューリップ、ひまわり、ユリ、八本のバラが生けられている。

 顕斗と遥架はパッと見ただけではよく分からず、初めから難しい問題であることに2人して苦い顔をしたのであった。

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