第10話

 結局のところ、海は何も知らないようだった。


 何時ものように学校が終わると、誰からともなく海の家に集まって悪さをしている日々が過ぎていく。

 楽しい時間が過ぎていくのは早く感じるもので・・・ 相変わらず海とは、泊まりに行ったり泊まりに来たりの関係は続いている。


 だけど、以前のように最後の一線を超えるような真似はしないように気をつけている、あの時はバレずに済んだが、いつもバレない保証は無いのだから。

 ただ、あの日を境に少し何かが変わったのは事実だ、僕にとっては嬉しい方向に。

 今までは、海とキスできるのはラリっている時だけだったけど・・・

 あの日からしばらくたって、お泊まりで遊んだ朝・・・ 当然朝はシラフに戻っているけど、オフザケのつもりで「おはよう〜」と頬にキスをしてみたら・・・

「ん・・・ おはよぉー」と驚いたり嫌がったりすることも無く、ごく普通の態度だったので、逆に僕が不思議な気分になった。

 でも僕は、これはチャンスだと思いお泊まりの時は先に起きて、で海を起こすようにした。

 たったそれだけの事なんだけど、なんだかになったような感じがして幸せを感じていた。

 海はどう思っていたのか分からなかったが・・・

 そんな日々がしばらく続いたある日、海が先に起きた時に、海が・・・ 海の方から僕の頬にキスをしてくれて「おはよう」と起こしてくれた。

 さすがに僕は驚いたが、動揺を見せずに「おはよぉ」と挨拶をした。

 僕は海の事が好きだから分かるんだけど、海は何故僕に・・・ 考えれば考えるほど分からなかった。

 海本人に聞いてみればいい事なんだろうけど、聞いてもし・・・ この関係にヒビが入ったらと思うと何も聞けない。

 僕にとっては嫌な事ではなく幸せな事だから、わざわざ自分から険悪な関係にすることは無いと思っていた。

 海も、嫌ならしてこないはずだし・・・ 海の本心は分からないけれど、今の関係が続くのなら何も言わずこのままでいようと決めた。

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