第9話
8時。
優里を保育園へ預けた後、店に出勤してマネージャーに美梨と海斗がいなくなった事情を話した。
もうしばらく待って夜になっても連絡がつかない場合は弁護士と警察に連絡した方がいいと告げてきた。
できるだけ周囲には平常心を装い業務に取りかかった。昼休憩に中嶋にも連絡し、2人が行きそうな場所を伝えると彼も調べてみると協力を受けてくれた。
18時になり、早退をして保育園に行き優里を車に乗せて帰宅した。玄関のドアを開けようとしたら鍵が開いていて、灯りがついていたので、名前を呼んだがリビングに行くと誰もいなかった。
警察に連絡をして10分後にパトカーが到着し、警察官に話をした後自宅で待機していた。
1時間程経ち折り返し電話がかかってきたので、出てみると美梨からだった。
何故黙って出かけたのか聞くと、彼女の両親から実家に海斗を連れてきて欲しいと言われたので、私が起床する前に家を出たと話していた。
私が帰宅した際に鍵が開いていた事を聞くと、荷物を取りに引き返して慌てて再度家に行ったためだった、申し訳ないと話していた。
もう少しで家に着くと話し電話を切り深いため息を吐いた。
20分後美梨と海斗が帰宅して、2人は誤解されるような行動を取り反省していると話した。
夕食後、子どもを入浴させて、浴室から出てきた海斗が眠そうにしていたので、先に寝かしつけた。優里にも寝室に行くように促したが私達に話があると言ってきた。
佐賀の家の寝室で寝ている時の事だったと言う。
「あのね、布団をかぶっていたら2人が隣のベッドで座ってたの」
「何か見たの?」
すると、優里がソファに座っていた私に仰向けで寝てくれと言い私の身体の上に乗ってきて、抱きついてきた。
「こうしてね、2人で裸になって体を揺らしていた」
「それを優里が見ていた?」
「うん」
「その後は?」
「大きい声を出してた。…あれ、何だろう?」
「起きて声をかけることはできない状況だった?」
「うん」
話から聞いて思いついたのが、佐賀夫婦が彼女の目の前で性交をしていたと憶測がついた。
また、佐賀の知人だと言う人物が牧場を経営しており、佐賀夫婦と優里とともにそこを訪れた際、宿舎の外で食用の羊を目の前で
更に彼女は、美梨を台所に連れて行き、私が見えないように2人で何かを話していた。
数分後私の元に戻り、優里は美梨から話を聞いてくれと言って寝室に入っていった。
美梨がリビングに戻ると、優里がある昼間に佐賀と2人きりになった時、クローゼットの中に入り込み、優里の股間を弄ってきて身体を淫らに触り卑猥な行為をされたと話したという。
「それが本当の話なら、あの人はあの子に何を教えたいんだろうか…」
「中嶋さんが紹介してくれた弁護士に依頼しよう。優里にも話せる権利はあるわ」
ますます佐賀の取る行動に不快な思いを持った。
私達は、翌週の木曜日に弁護士の元へ相談を持ちかけた。佐賀夫婦から子どもらを引き取り合う事、優里が佐賀からの虐待を含めて精神的苦痛を受けた事を話し、血の繋がらない私でも育ての親として一緒に居られるように裁判に持って行きたい事を話した。
弁護士からは家庭裁判所で話し合う形式で行う民事調停を行い、それでも成立しなければ訴訟に持っていくようにと促してきた。
早速佐賀夫婦に申し立てを行い、誓約書を送付してもらった。
私はもう涙さえ枯れてしまい、純真な子どもの思いも汚されてしまった悲しみに、怒りの種が早い速度で芽生えて伸びていき身体に絡みつくような感情に
───佐賀の本性を暴きたい。
彼を知ったところで子ども達の立場や視点が見えた時、私は彼らの本来持つ居場所を与えて訴える協調性を取り戻していきたいと心底思った。
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