第7話
留置所に身柄を拘束されてから24時間近くが経過しようとしていた。
18時。夕食の運搬がされてこないので、担当官に尋ねてみると別の警官がこちらに向かっているので待機していろと言われた。
その後私の元に警官が来て釈放が決まったので外に出るよう命じられた。
面談室に入ると刑事から説明を受け、弁護士から今回の件については誤認逮捕に当たるので帰宅しても良いと話し、優里については佐賀夫婦の元に返したと告げられた。
警察署を出た後自宅に到着すると、美梨と海斗が安堵した表情で迎えてくれた。
「迷惑をかけて申し訳なかった。」
「…早く部屋に入って」
海斗が私の手を引いて待ち侘びたように懐いていた。3日ぶりに揃っての夕食はとても優しい温もりに包まれている感覚になった。
海斗は警察署が怖くなかったかと心配していたが、2人の事をずっと考えていたから安心して欲しいと返答した。
私は彼と浴室で湯船に浸かり、上がって部屋に戻ると私を見ながらはしゃいでいた。
「パパって呼んで良い?」
「ああ。良いよ」
「ママもママって呼ぶよ?」
「うん。海斗、パパに髪を乾かしてもらいなさい」
「ううん、僕自分でやる」
「…だいぶここに慣れてきているようだな」
「晴が居ない間、あの子泣いていたの」
「そうなのか?」
「うちの子になろうと、彼なりに頑張りたいのかもね」
「佐賀さんのところには帰りたいとか言わないのか?」
「あまり口に出さない。海斗も色々言われてきた子かもしれないね」
美梨も疑っているのか。あれだけ優里を欲しがるのも、あの夫婦が考えている事が何かに彷徨っている気にも感じていた。
我が子を上手く支えれない理由は何だろうか。
2週間後、店の厨房で作業をしている時に、私に来客がいるので顔を出して欲しいと言われたので、店頭に出るとある人物がカウンター席に座っていた。
「ここにいたか。晴、久しぶり」
前の店でオーナー契約をする際に立ち会ってくれた知人の中嶋だった。彼は最高裁判所の判事という肩書きを持つ元弁護士で、ある刑事事件を担当した際に違法行為に触れた為辞職した。
現在は自称便利屋という異色の人間だ。
ある情報源から私が誘拐未遂をした事を知り、顔色を伺いに来たという。
「それで、用は何?」
「佐賀って夫婦の件で、単独で調べたんだ。優里ちゃん、このままだと返せないかもしれない」
「どういう事?」
「美梨さん、佐賀の旦那と関係があるみたいだ」
すぐに話は飲み込めなかったが、近いうちに私と優里、佐賀とDNA鑑定を受けた方が良いと告げてきた。
数日後、佐賀の自宅を訪れて中に入ると、彼の妻と優里の姿がなかった。2人で出かけだと言っていた。
「優里との血縁関係に何か問題でもありますか?」
「私も、弁護人を立てる事にしたんです。」
「それで、そちらの弁護士から鑑定を受けるように促されたと?」
「はい。後日一緒に病院に行っていただきたいんです。お時間作ってくれませんか?」
「…わかりました。予定を合わせます」
何故素直に応じたか分かりにくかったが、佐賀と日程の打ち合わせをし、その後自宅に帰って美梨に伝えた。
更に数日が経ち、私と佐賀と優里が指定の病院で待ち合わせをし、それぞれ検査を受けてから、結果を待っていた。
2週間後、お互いの夫婦全員で病院へ行き鑑定結果について、面会室にて医師から説明を聞いた。
「こちらの書類に記載されてあります。葛木晴さんと優里さんとの鑑定結果ですが、お二人に陰性反応が出ました。つまり血縁関係に当たらないという結果になります。…続きまして、佐賀
私は愕然とした。
中嶋が言っていた通り、佐賀と優里に血縁関係がある事を知り、帰りの車中での沈黙に耐えきれず、私は近所の河川の駐車場に車を停めて美梨から事情を聞く事にした。
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