イケボのおじさんと私的なアレコレ
第9話 おじさんは乙女の天敵
【前話ダイジェスト】
あるんだよ…神様にだって
「泣く娘さんには勝てないよ!?」
って叫びたくなる瞬間
【本編】
「もう……お嫁に行けません」
「すみませんでしたぁ!」
再び安定の土下座中です。
「みんなの前でお姫様抱っこされるだなんて」
もう床に頭がめり込むのではないかという程に土下座です。
ですが、ですが、あれ以外に方法は思い浮かばなかったのですよ! 反省している今でも、それは変わりません。
「みんなの前で腰砕けになっちゃうし……」
──そういえば、それです。何故彼女は腰砕けに? 思えば、天界相談窓口に居たときにも、彼女は腰が砕けていましたね。
「失礼ながら、持病かなにかでしょうか?」
「主任のせいじゃないですか!」
「し、失礼しました!」
額に痣が出来そうなくらいに土下座します──が、何が悪かったのでしょうか。思い当たる節はないのですが……。
「そ、それより、もう終業時刻ですよね、帰りたいんですけれど」
「はっ、もうそんな時刻でしたか。どうです、立ち上がれそうですか?」
楓さんは、デスクを掴んで上半身に力を込め、その細腕がプルプルと震えます……が。
「……あと、少し。1回立ち上がれば、あとは大丈夫だと思うんですけれど」
「では、失礼しますね」
緊張を隠しながら彼女の右腕を取り、自分の首にその腕を回します。
(……色即是空……煩悩退散)
途端に華やかな香りに包まれる自分を戒め、彼女の動きに集中します。柔らかい、とか、温かい、とか考えてません。
(逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、脱げちゃダメだ、バレちゃダメだ……)
おかしいですね……徐々に煩悩が勝っている気がします。
「よいしょっと……ありがとうございます主任! これなら歩いて帰れそうです」
ちょっと!この至近距離で笑顔を振り撒かないでください!「惚れてまうやろぉ」と叫びたくなってしまいます。
それはともかく……黙っているのは怪しいです。邪な気持ちを抱いてしまったことがバレてしまいそうです。女性というのは鋭いと聞きますから。
気持ちをなんとか誤魔化しつつ、紳士に、いつも以上に丁寧に言葉を紡ぎます。
「無理しないでください。お気に触らないのでしたら、自宅までお送りいたしますので」
「ひゃうぅぅ!」
途端に腰が砕け、またもや床にしゃがみこんでしまう楓さん。開発課に乗り込んでいるときの彼女と同一人物とは思えないのですが、一体どうしたのでしょうか。
「み、耳元は……反則だよぉ……」
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