第6話 おじさん板挟み
【前話ダイジェスト】
あるんだよ…神様にだって
「部下が激おこぷんぷん!?」
で慌ててフォローにまわる瞬間
【本編】
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
「楓さん! まずは話し合いだって言いましたよね、私!?」
「身勝手な奴には容赦しねぇ!!」
「この状況だと、寧ろ私達の方が身勝手と言うか無法者ですってば!」
必死に説得を試みますが、楓さんから返ってくるのは雄叫びばかりなんです。
それと──
「ひぃぃ!?」
日本刀の雨霰。
いや、抜き身でないのです。けれど、鞘に収まっているというだけで、武器と言う点は一緒です。背後から楓さんを引き留めるのも命懸けなんですよ!?
一度死んでるので命懸けと言うのも語弊がありそうですが。
「どこで選択を間違えましたかねぇ」
必死に楓さんを羽交い締めしながら、後悔が後を絶ちません。
楓さんの受けた相談は地域からのものでした。
「上流から、汚水が垂れ流しになっているのを何とかしてほしい」と言う深刻な相談。
楓さんは開発課に
「それにしても、まさか人魚も居るんですね、天界には」
「そうだ、あの糞やろうども! しかもしらばっくれてニヤケ面浮かべやがった! ぜってぇ確信犯だあいつらっ!」
「まさか人魚の言葉で、更に燃え上がらせてしまいましたか……」
必死に背後からしがみつきますが、楓さんの歩みが止まりません。セクハラが怖くて押さえきれていないせいです。羽交い締めとは言いましたが、私の腕は彼女のお腹に回すのが精一杯な訳で。つまり彼女は上半身の捻りだけで──
「ぶべらっ!?」
あぁ、また一人犠牲者が壁まで吹き飛ばされてしまいました。これで何人目でしょうか。開発課に何人の方がいらっしゃるのかは存じ上げておりませんが、もはや後数人しか残っていないのでは?
「って、むぎゅう!」
突然、楓さんの歩みが止まりました。彼女の腰に腕を回して引きずられていた私は、当然のごとく彼女のお尻に顔を突っ込むわけでして……
「おぉ、茨木の嬢ちゃん、こらまた派手にやらかしたもんだなぁ」
セクハラの4文字が脳内でけたたましくアラートを鳴らしたのと同時に、野太い声が聞こえてきました。
「虎ノ井っ! てめぇ、なんでごみ処分場の土地を売却なんてしやがった!」
「はぁ? 何を言い出すのかと思えば、売却だぁ? そりゃあうちの領分じゃねえから、知らねぇよ」
「知らねぇ筈がねぇだろうよ! 都市計画課とお前らがグルでなきゃ、元処分場が売りに出されるはずがねぇ!!」
今にも噛みつかんばかりの勢いで男性……虎ノ井さんとやらの胸ぐらに掴みかかる楓さん。
一方私は楓さんが歩みを止めたことでようやく立ち上がることが出来ました。
「悪役っぽくなっから、あんまりこうは言いたくねぇがよ、証拠でもあんの?」
「それ以外有り得ないだろう!」
「そこまでです、楓さん」
楓さんと、虎ノ井さん?の間に割って入ります。
……ここに来て、ようやく話す体制に入れましたね。とは言え、この状況、かなりの修羅場なんですが。それに、初めてお目にかかりましたが、虎ノ井さん?かなり筋肉質の方だったのですね。そして背も大きい。──その視線はチビりそうな程なんですけど。いや、楓さんの視線も同様なのですけどね。
この場を納めること、出来るのでしょうか、私に。
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