第5話 おじさんと同僚

【前話ダイジェスト】

あるんだよ…神様にだって

「名前呼んだらセクハラって!?」

って落ち込む瞬間


【本編】

 昼食を兼ねて、今更って感じではありましたが着任式?を終えました。

 楓さんを名前で呼ぶことになり距離が縮んだと思ったのですが……。


「距離は物理的に遠くなりましたね……本気でセクハラで訴えられるかも」


 私の席は主任ということもあり、天界相談窓口の一番奥の窓際、所謂お誕生日席です。

 そして楓さんは、何故か午前中とデスクを変え、一番入り口カウンターに近い……言い換えれば、私から一番遠いデスクに移りました……腰は砕けたままだったので、腕でデスクを掴んでキャスターで移動していましたが。


「本気で謝った方が良さそうですね……腑に落ちませんが」


 セクハラで訴えられたら、男性に勝ち目などありません。どうやって謝りましょうか。お詫びに食事でも……今度はパワハラで訴えられそうです。


 悩みながらも仕事は進めています。当たり前です。今は前主任の残した資料に片っ端から目を通しています。

 ここ天界相談窓口は、役場の一部門であり、主に相談を受け付け、状況に応じ他の課へ橋渡しをすることが主な業務のようです。


「それで黒電話が10台もあったのですね」


 黒電話である意味が正直わかりませんが。それと石炭ストーブも。

 おっと考えが逸れましたね。現在黒電話は、1回線のみ繋ぎ、楓さんが対応してくれています。まぁ当たり前です。10回線繋いだところで、受けられる人が居ませんから。って、おや?


「何かあったのでしょうか?」


 電話対応していた楓さんがスッと立ち上がりました。どうやら腰が砕けたのは治まったようですが、何やら雰囲気が──


「主任──少々席を外します。安心してください、目的地は同じ役場内ですから」

「ちょっと待ってください、私も行きますので」


 放っておけません。無理です。腰が砕けていた楓さんが心配なのではありません。心配なのは──


「移動しながら相談内容を聞かせてください。これは命令です」


 額に角が……幻覚?

 そして、その手にある見事な鞘に収まっている日本刀は、いったいどこから?


「楓さん……人、なんですよね? あっ、今は天使でしたか」


 思わず呟かずには居られませんでした。

 そう言えば、生前の日本には、茨木童子って鬼の伝説があった気がしますねぇ、なんとなくですが。




 



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