第4話 おじさん夢中になる
【前話ダイジェスト】
あるんだよ…神様にだって
「イケボで職が決まるってなに!?」
って悩む瞬間
【本編】
「確かに主任、無茶苦茶イケボですよねぇ!」
「そう感じることは、無いんですけどねぇ」
「それはそうでしょ? 声色がイケてるかなんて、周りが判断することですし?」
「言われてみれば、その通りです。声は、長年の付き合いですから…なんと言いますか、これが当たり前って感じます」
生前のことなどほとんど覚えていませんが、なんとなくビール会社的な芸人さんの声と似ているなんて、言われたことがあったような、無かったような──。
「主任~あたしの名前を是非そのイケボで呼んで下さいよ~! その、『あなた』って呼ばれ方、なんか、こう、むず痒いですし!」
「それは確かに……名前で呼ばないだなんて失礼しました。では、なんとお呼びすれば?」
すると彼女は、ニンマリ笑って胸を反らしました。
おおぅ、かなりのボリュームです。生前異性と縁がなかった私には刺激が強すぎ……って、何故こういったことは生前の記憶があるのでしょうか?
「ちょっと、主任! がっつり見すぎですって! いや、見せてるのあたしですけど、そんなに見つめられると、流石にハズイっていうか、その──」
「あっ! そ、その、大変失礼しました! ええっと……茨木さん、とお呼びしても」
「楓……の方で呼んでくれたら嬉しいです」
「では、楓さん、と呼ばせていただきますね。今更ですが、今後ともよろしくお願いいたします、楓さん」
「はうっ!」
彼女──茨木楓さんが見せたかったのは勿論胸ではなく、ネームプレートですよね。当たり前です。勿論です。わかっていましたよ? でも仕方がないではありませんか、こうも見事なものをお持ちなのですから、目を惹かれない訳もありませ──いえ、なんでもありません。セクハラなんてとんでもな──って、どうしたのでしょう。
「どうかされましたか、楓さん? 体調でも?」
「な、なんでも、無くはないけど……ちょっと腰が砕けたって言うか……」
「砕けた、ですか? 何故急に?」
「そ、そんなに名前連呼されたら、あ、ああぁ!?」
「大丈夫ですか、楓さん!」
「せ、セクハラに、なるんですかね、コレ……」
セクハラだなんて困りますよ!? 名前を呼んだだけですのに! 着任早々無職だなんて洒落になりません!?
仕方がないので、声をかけずに見守ることにします。って、なんだかさっきより悪化してませんか? 足がプルプルして、生まれたての小鹿みたいになっています。いや、ガクガク、でしょうか。
これ、医務室連れていった方が──いや、下手に触れば、今度は本気でセクハラで訴えられかねませんね……いったいどうすれば!?
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