第33話 【野球を1年間できる幸せを語る】
子どもたちへの野球の普及活動が軌道に乗ってきた中でうれしい出来事があった。2000年12月11日、タイの国体の開会式が行われていた。なんとタイの国体にはじめて野球が正式種目になっていた。真は開会式に参加しながら、ここまでの活動を振り返ってみた。
当初、目標としていたことはほぼ順調に進んできていたと言ってよい。中でもアジア初の中学生世代の国際大会にタイチームが参加できたことは、時期尚早と感じていたし無茶な挑戦だったかもしれないが、結果的に子どもたちと貴重な体験を積み、野球の普及に追い風となったことは大きな成果であった。
そして、さらに国体に野球が正式種目に採用されたのである。初の正式種目となっての初優勝は何とスパーンブリー県体育学校が飾った。これらの出来事は、この後のタイにおける野球発展の歴史において大きな足跡となったことは言うまでもない。真はあらためて決意した。タイ滞在期間における最大の目標は、タイの「甲子園大会」を開催することである。
タイ野球連盟のチャイワット氏と相談して進めてきたが、11月末から開催する方向で準備を進めていることが伝えられた。このことを子どもたちに伝えると歓声があがり、彼らにとっての目標が定まり、日々の厳しい練習の励みとなった。
スパーンブリー県の子ども達も大喜びしているだろう。更に言えば、地道ではあるが競技人口が少ない中で細々と野球を続けていた全国の子どもたちや日本人学校、インターナショナルスクールの子どもたちにとって大きな励ましとなったことを思うと、真にとってもあらためて喜びがこみ上げてくるのであった。
9月からは、ナコンシータンマラート体育学校での野球指導に加え、土日は、南部最大の都市ハッジャイのソンクラー大学での野球指導、10月からは大会へ向けた実践的な練習へと計画的に進められていくのであった。日中は熱帯の日差しが照りつけ、うだるような暑さの中、子どもたちが暑さに滅入ってしまう気持ちを一掃するように練習は続いていた。
練習中「暑い」と泣き言を発する子どもたちに対して真は「僕の故郷・北海道は、半年間が雪に覆われて野球ができない。それに比べてここでは一年中野球ができるから幸せだ。暑いことは誰でもわかっていることだから今更暑いことを嘆いたって何にもならない。それより今日もいい天気で野球ができて幸せだと感謝の言葉を発するんだ」と言い聞かせ粘り強く練習を続けていった。
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