第32話 【最先端を行く喜びを味わう】
8月11日(木)からの3日間、大学生や大人たちと試合をやってみて大差で勝ち進み、決勝でチュラロンコン大学チームに僅差で負けたものの、自分たちがタイの国内でトップランナーとして走っていることが実感できたのだ。
大会の2日目、集まった大学生や大人を対象に開催した野球教室で、いつもの練習メニューを一つ一つ披露した時に、子どもたちは自分たちが最先端のことをやっているとの自覚と誇りを持つことができた。
参加した大学生や大人はヘトヘトになっていたが、ナコンシータンマラートの子どもたちは元気一杯、声と動作をそろえて行う練習にすっかり参加者たちを魅了させることになったからである。
真もマネージャー兼選手として参加し、いよいよ優勝がかかった決勝の日の朝、前日から仲良くなった友達と朝まで飲んだくれていた真は、決勝には出場できなかった。それでも初出場の中学生チームが、大人の中で準優勝を飾ったのである。
校長先生も自分の学校の生徒たちが成果をあげると嬉しくなるもの。初めて日本人をコーチとして迎えたものの、野球というタイには馴染みのないスポーツを子供たちが取り組んでいることに、半信半疑で様子を伺っていたはずである。大人が参加するソフトボールで堂々の準優勝を飾ったのである。校長先生は外で行われる会議などに真を伴って参加するようになった。
おかげで真は南部のいろんな場所にいくことができた。その反面、電気代がかさんだのか快適な一人部屋からコーチのポーンの部屋に移ることになった。4階に部屋はあるのだが、子どもたちも同じ階にいるため夜も騒がしい。クーラーもない。夜になると一人の時間がない。
コーチのポーンが気を使ってくれているためわがままを言う訳にも行かず、我慢をして夜はできるだけ早く寝るようにした。2週間が経過した時に、左足の膝の裏あたりにやけどをしたような水疱ができた。酔っ払った時にタバコの灰でやけどをしたのかと思った。水ぶくれを潰して寝て朝起きるともう1ヶ所に同じような水疱ができていた。
最初にできたところが膿んで痛みを感じた。それでもほっておくと数カ所に水疱ができてしまった。さすがに気持ち悪くなりJICA事務所に電話をして相談してみた。すると「グーサワッ」(直訳すると蛇のなんとか、水痘)というものらしい。疲れがたまっていたか免疫力が低下していたことも影響していたかもしれない。
それよりも一番の理由は、コーチのポーンの部屋に寝るようになってから寝ていたところに敷いてあった布、タオルが不衛生だったことだと思う。近くの病院へ行き、塗り薬とペニシリンを2週間分もらって服用し何とか回復した。
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