第30話 【タイ南部で野球普及を進める】
遠くバンコクからは769キロ南に位置するナコンシータンマラート県は、タイ南部に位置するため紫外線量も強い地域で、日中は日本の真夏の猛暑以上の気候が続く。その中で真とコーチのポーンは2人3脚で、23名の野球専門の子どもたちへ野球の指導を重ねていった。
バレーボール部、水泳部から転身した3年生10名、新入生13名は、来る日も来る日も基本練習を中心に地道な練習を積み重ねていった。彼らのまじめな取組を見ているときっとものになるという確信のようなものを感じた。
6〜10月、雨季にあたるタイでは、バケツをひっくり返したようなスコールに見舞われる。外の練習場は水たまりとなって魚が泳ぎだす。そういう時は、屋内で基本的な動作を身につける練習、バッティングもバドミントンの羽根を打つなど、子どもたちにとって一歩やり方を間違うと、モチベーションを下げて意欲を低下させてしまう可能性のある内容であっても楽しく取り組ませる工夫をこらしながら進めていったのである。
日本から「ベースボール・クリニック」という月刊誌を取り寄せ、最新の練習方法を参考にしながら、子どもたちに世界最先端の練習をしていることも伝えながら、基本動作を身につけることに主眼を置いた練習メニューを実践させていった。前述したが真には、2年間という限られた活動期間の中で立てた目標が3つあり、1つは、複数の場所できれば3ヶ所に野球チームを作ること、2つ目は、タイ語で野球の技術本を作成すること、3つ目は青少年野球大会「タイ版の甲子園大会」を開催することであった。
スパーンブリー県に続いてここナコンシータンマラート県体育学校は2校目ということになる。最終的には自分がいなくなった後にも、お互いが野球技術の向上を目指して切瑳琢磨していけるようになるように、北部か、東北部にもう1校のチームを作って、さらに野球技術の継承のため技術本を作成することでその後押しをして、年1回のタイ版の甲子園大会に年々参加者が増加していくことで、タイにおける野球が普及していくことを思い描いていたのである。
真のミッションは青少年への野球の普及が最優先ではあったが、野球連盟がいろんな地域の学校や団体から要請を受けて野球教室を開催し、技術指導を行う機会も含まれていた。南部の最大の都市はハジャイである。ここには名門ソンクラー大学がありソフトボールチームがあった。
真が南部にいたことから、卒業生と学生に向けて野球教室を開催することになった。また、ソンクラー大学で8月11日〜14日までソフトボールの大会が開催されることから、ナコンシータンマラート体育学校も参加することになり、出場する3年生に慣れさせるためにソフトボールの練習もさせるようになった。
オリンピックのソフトボールの試合を拝見すると、ピッチャーのスピードボールをはじめ高度な技術が求められることは理解しているつもりであるが、タイで行なわれているソフトボールは、野球のプレスポーツという位置付けというとらえ方を子どもたちには伝えてきた。
野球ができるようになれば、自然とソフトボールはできるようになると言い聞かせ、ソフトボールの練習はポーンに任せて見ているようにしてた。ポーンもソフトボールのことは任せておいてほしいという気持ちを見せながら指導にあたっていた。
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