第4話
次の日の朝、クラスに入った時に声をかけようと決めていた。
ドアを開けると、心臓がきゅっとした。
緊張なのか、なんなのかわからなかった。
窓際後ろから2番目の席のその女の子は
まだ来たばかりのようで、赤いランドセルから教科書を机にしまっているところだった。
ぼくは一直線に女の子のもとへ歩いた。
『あの、おはよう。』
声が小さい。
『実は、昨日からすごく気になって仲良くなりたいと思ってて、ともだちになりたくて』
どうしたら伝わるだろう。
今日は赤い小花柄のハンカチを持っていた。
『ハンカチ、可愛いなと思って』
女の子は突然のことだったからか、目を丸くしていたけれど、
『ハンカチ、嬉しい。ありがとう。いつも外で遊んでるよね、ゆうちゃんでしょ?』
知ってるよ、と笑顔で答えてくれた。
『わたしの名前、わかる?』
正直、まだ覚えていなくて、でもかっこわるいところを見られたくなくて、そっと女の子の机に貼ってある名札を見た。
『ひろちゃんでしょ?』
ひろちゃんはぼくの目をずっと見ていた。
『ゆうちゃん、名札見たでしょ。そっか、覚えてないのかぁ、ふふ、よろしくね』
声がとても心地良い。
なぜ覚えていなかったのだろう。自分を許せなかった。
聞いてみると、昨日ひろちゃんと一緒に話していたのはさとちゃんだったらしい。
さとちゃんって面白いよね、とひろちゃんは言っていた。どきっとした。
朝の会のチャイムが鳴って席に戻った。
なぜだかわからないけれど、その日はさとちゃんを見ると少しだけ心がざわついた。
きっと、面白いと言われたのが羨ましくて悔しかったんだろう。きっと、きっとそうだと思う。
赤から黄色へ ひまわり @tuyo11
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