第7話

 30過ぎて童貞は魔法使いだのジェダイだの妖精だのと揶揄される。

 LGBTQや性全般で間違った偏見のある時代では、ヘテロ(ノーマル)であるにも関わらずホモ扱いまでされた人もいるという。


 だが、40まで童貞だと最早無敵だ。


 キモいを通り越して怖いと畏怖の念を抱かれるようになる。

 ご先祖さまは血統が途絶えると草場の陰からさぞさめざめと泣いていることだろう。

 異次元の少子化加速の一端を担っているといって過言ではない。

 だがしかし待ってほしい。

 子供を授かる行為を快楽の為に無計画に避妊せずでバンバンやっといて、いざ子供が生まれたら堕ろすの産むのと係争する男女がいることを考えたら、誰も傷つけず快楽のリクスマネージメントしていると言う見方も出来るのではないか。


「いや、そういうことする相手がアンタには出来ないだけでしょ。根底からキモい。何も考えないで。」

 あの、チカさん?

 いちいち地の文ナレーションに出てこられると困るのですが。

「ウチのボスから思考を読む水晶借りてきたんでアンタの頭の中を見てみたら、エロゲーやりたいですって?私達の目も気にせずおぞましい行為に出たら目を潰すわよ!?」

 中世拷問器具めいた目潰しの道具を用意され、俺の熱情は一気に霧散した。おお、神よ。

「独身の男の唯一最後の楽しみが…っ。」

「40になったらその辺枯れなさいよ。」

「40になっても枯れないのが男の悲劇なんだよ。ささやくのよ。俺のアンドロゲンがっ!」


「そうだ。そういうのやり過ぎて、テクノブレイクで死ぬっていう都市伝説があるわ。」

 黙って俺という腐って液状化したミカンを見ていたアイが突然手を合わせた。

「えっ。」

「そうよ。それなら死んでても何の不自然もないわ。」

「ちょっと。」

「欲しいのは貴方の魂であって身体じゃないもの。心臓発作とか丁度いい丁度いい。」

「待って。アンドロゲン黙りました。股間ヒュって音までしました。アイ様やめてください死にたくないです!」

「どうした?やりなさいよ。怖いのか?」

「怖いよ!」


 俺は命の為に性を諦めねばならず、布団の中で泣いた…。



 気づけば眠ってしまったらしい。

 明晰夢になったことを自覚しながら、俺は夢の中で胡座あぐらをかいた。

「旅立つ時です。何者にもなれなかった者よ。」

 巨大な鎌を持った目隠れ黒髪女子の女神様が降臨した。

「断固拒否します。」

「こ、これを見てもですか。」

 女神様が背を反らせて白いローブに包まれた大きな胸を強調する。

「…。」

「あ、あれ?下僕しもべがこうやると鬼灯は死ぬって…。あれ?死なない?」

 もしかしてだけど、女神は天然なのか?

 それでいて、俺を殺そうとしてるのか?

 眠っていて分からないが、俺はチカとアイの意地の悪い笑みが見えた気がした。

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