第6話

 引き篭もり生活を続けた結論として、引き篭もりは運動不足になり身体によくないことが分かっている。

 スウェットでは洗濯の手間があるからと下着姿でスクワットを始めたが、病み上がりのせいか直ぐに足がガクガクになった。


「生まれたての小鹿?」

 チカが小首をかしげた。

「スクワットだ。失礼な。」

「一回足を縮み伸ばししただけで、そんなガクガクになるの?大丈夫?生まれ変わる?」

「スナック感覚でサクッと殺そうとするな。そもそも俺は物騒な事は嫌いなんだ。」

「そう言われても、死なないと転生されないのが大方のルールだしね。」

「そうやって人を死に追いやるなんて、輪廻転生えげつないな。どういうアイデアだ?」

「元々は人が悲劇的に亡くなった時に、きっと来世ではーとか言って遺族の慰めになる程度だったのに、それを身分に利用したり自殺の口実にしたり果てはウチのボスが一枚噛んだりして古代からゴチャゴチャになってる、て話だと思うけど。」

「その辺は議論の余地ありだな。」


 というか、女神をボスとか隠さなくなってきたな。


 俺は薄々、この二人の小さな妖精が幻覚幻聴妄想の類ではないことに気づきながらも、チカとアイの正体に触れないようにしていた。


 怖いからだ。

 頭がイかれてる方がまだ説明がつく。


「そういや、最近アニメとか見てないな。」

「」

 チカが軽蔑し、アイが凍りついた顔をした。

「その歳で、アンパン顔のヒーローでも見るの?」

「なんで幼児御用達のアニメしかみない設定なんだよ。」

「いや、アンタって人生が幼いから。」

「心も身体も40の男だよ。さて、」

 俺は何世代も古くなったノートPCの電源を入れる。


……


ウー ヤッホイ!

チャラララ!


 エンドクレジットまで見て、チカがうめく。

「何これキモい。」

「タイトルは『お兄ちゃんはお姉ちゃん』だってさ。」

「ちょっと見えないようになるわ…。」

 アイが目の前から消えた。

「アタシも。」

 チカまで消えた。


 …えっ!?


 アニメ見て退治できた…のか…?やった…?


 翌朝、二匹の巫女妖精は何事もなかったように視界に現れた。


 俺は、甘く見積もった自分に負けた。

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