第3話

 朝方、夢を見た。

「異世界転移ならいいでしょう?」

 うふふ、と顔の見えない巨乳の転生の女神が手を合わせる。

「いや、良いとか悪いとかでなく…」

 反論しようとしたが空しく、転生の女神から発せられた光が俺を貫いた。


「転移」


 次に目が覚めた時、俺は下着姿で荒野の中にいた。

 砂が下着の中に入り込むのを手で払って、立ち上がる。



 そうきたか。



 転移した後、元の世界での俺はどうなっているのだろう。中年ニートが失踪。ゾッとする。


 俺が頭を振ると、空の様子が次第にはっきりしてきた。

 二つの月が地平線に沈んでいき、一つの太陽が上がってくる。


 肌寒く、頼りなく周囲を見渡す。

 パニック障害だった俺は、一人で生きていかなくてはならない。


「ここは、どこだ?」


 第一声、俺は間の抜けた声で呟いた。


☆☆

 壮大な冒険から現実に帰る時だ。

 俺は冷房の代わりに間違えて暖房を押した部屋で眠っていた。

 現実はどんなファンタジーよりも薄ら寒く酷薄なのだ。

 そう気づき、涙を流した。

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