第10話 結婚式

 結局何もできないまま、とうとう恐れていた日が来てしまった。


結婚式では、私は新婦の友人としてスピーチを任された。彼女と過ごした15年間を5分で語るにはあまりにも短すぎたが、朝まで試行錯誤してなんとか原稿を書き上げた。

 

 式場のチャペルでオルガンの音が鳴り響くとともに、後ろの重い扉が開いた。真っ白なドレスを身にまとって登場した彼女は、言葉で言い表せないほど美しすぎて思わず息を飲んだ。ベールに包まれた顔は、よく見えなくても最高に幸せそうな笑みをこぼしているのが雰囲気でわかる。

 

皆に祝福される幸せそうな二人を見ていると、新郎への嫉妬心と自分があくまで彼女の友人でしかないことへの悔しさが滲み出てくる。そんな自分が惨めで情けない。

 今まで彼女の一番近くにいたからこそ、今日は彼女の旅立ちを最後まで見届けるんだ。そう思い直して気持ちを切り替えると、新郎に対する醜い気持ちを無理やり心の奥底に押し込んだ。


 チャペルを後にして披露宴へと移動した後、華やかな音楽とともに主役の二人が入場した。彼女が歩きやすいよう、新郎はドレスに手を添えてエスコートしていた。とてもスピード婚とは思えないほど、仲睦まじい二人の姿を目の前にして、そこに私が入り込む隙間なんて1mmもなかった。悔しいけれど、新郎を見つめて幸せそうに微笑む彼女を見ると、そう認めざるを得ない。


 こんなに満面の笑みで輝きを放つ彼女の幸せを壊すなんて、そんなことできるわけない。今の私にできることはただ一つ、彼女のこの晴れ舞台を笑顔で最後まで見届けること。ただそれだけだと何度も自分に言い聞かせた。

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