アロー村編
第2話 初めての村
うーんとりあえず乗って見たけど車ならまだしも馬なんて操縦したことないからな。そもそも馬を操縦するって言うのか?
とりあえずこの操縦席に乗って、この馬車について詳しく見てみるか。
なるほど、だいぶ分かってきた。さっき見た通り馬車の形も馬も自分の好きなように変えられる。荷物も好きなようにいじれるから、自分の売りたいものを売ることが出来る。さすがに宝石類はだめかと思ったらありだった。見れば見るほどなんでもありだなこの馬車。
でもこの馬車に入り切らないものはダメと。一軒家とか選択してみたけど出てきたのは○ルバニアファミリーの小さなお家だった。生き物も生きたままだと出せないのか。そうゆうところはちゃんとしてるんだな。
それで、馬をどうやって操るかだけど……ああ、これか。
〈馬の取り扱いについて〉
・馬車をひく動物はなんでもOK、ユニコーンから人間まで。
・引く馬を決めたら一生懸命育ててあげましょう。馬としてのレベルが上がれば乗り心地もスピードもUP
・御し方は簡単。御者台に乗ってあなたの馬に行きたい方向を伝えてあげましょう。あなたの望む所までどこまでも連れて行ってくれるでしょう。
──まとめるとこんな感じか。
人間ってなんだよ。人力車とかじゃなくてこれほんとに人が紐で引っ張るやつじゃん。見なかったことにしよう。
あと馬車の操縦は御するって言って、乗るところは御者台って名前か、気をつけよう。
まあ初めてだし引かせるのは普通の馬でいいんじゃないか?
こうゆうところで変にかっこいいからとか言ってフェンリルとかユニコーンを選んで苦労するなんて目に見えてるからな。
〈馬〉選択欄で〈ノーマル〉を選んで、〈決定〉と。
なんか馬が走って来たけど……これ、もしかしてそうゆう感じ?
そりゃあ、なんにもないところから突然動物が生み出されるのはおかしいけど、リアルにするとこそこなのか。
近づいてきた馬はこっちを見て目を合わせてきた。
お前すごいかっこいいな、凛々しいし。
えーっと、名前変更は後でも可能か、ならゆっくり進みながら考えようか。
「よし、じゃあとりあえず道なりに進んでくれるか?」
伝えたら本当に進んでくれた。結構揺れるな、ただの砂利道だからか?
お、ちょっとスピード出ると安定してきたかな?
不安もあったけどこうやってちゃんと進んで見るとワクワクするし、なかなか嬉しい。誰しも1度は憧れるもんな。
「いい匂いだ」
しばらく進んでいると、おもわず声に出てしまう。
鼻に突き抜ける草木、自然の匂い。身体で感じる風。馬の鼻息、砂利道を歩く音。ゆったりと流れる雲と、気持ちのいい日差し。
そうか始まったんだな、俺の旅が。
馬の名前だけどどうしようか。
人の名前を決めるのもあんまり得意じゃないのに、馬の名前と言われても俺には無理だ。
申し訳ないけど知ってる馬の名前から借りよう。ここは別の世界だし誰にも怒られないはず…。
〈馬〉の〈名前変更〉それでここに入力か。
「お前の名前は……そう!【イセカイテイオー】略してカイオーだ」
テイオーと呼ぶのは流石にダメだ。でも馬に詳しくない俺が知っているくらいだからすごいのだろう。がんばってくれよカイオー。
嬉しそうな顔してるな、可愛いヤツめ。
これからよろしくな。
かれこれ1時間くらい経っただろうか、馬に名前をつけてはしゃいでいたらいつの間にか周りに牧草地が広がり、柵があって遠くに建物が見えてきていた。石造りでヨーロッパ風の建物、かっこいいな。
ついに会うのか、この世界で人と。
緊張してきたな、服装はこれで大丈夫だろう。荷物も……鉄、塩、酒、その他もろもろ特におかしいところないな、元からこの馬車の中に入っていたもので行商できるだろう、多分。
あと言語だけど、どうしようか。いま喋る言語がこの身体の持ち主が話すこの世界の言葉なのか、前世の言葉なのか分からない。けどこればっかりはどうしようもないぶっつけ本番で行こう。
やばい結構近づいてきた、カイオー意外と足速いなお前。
あと心配なことはなんだ? この世界の文化が分からないとかか? 全然検討もつかない、なにかないのか〈旅する異世界〉みたいなパンフレット。
──ダメだ、メニュー画面にも何もない。
しょうがない、雰囲気だ。何となく村の雰囲気を感じ取ろう。失礼なことしたらもう謝るしかない。頑張ろう。
「あ、どうもー。こんにちは」
「あれ、いつも見るような商人さん達とは違うね。この村は初めてかい?」
通じる。言葉が通じるぞ!
「ええ、ちょっと別の国から来ましてたまたまこちらに来たんで」
「そうかい、ならまずはあそこ一際大きな風車が見えるだろう? そこの近くに馬を止めておけるような商人の宿があるから行ってきな」
「わざわざ親切にありがとうございます」
「いいんだよ? 後で商品値引きしてくれたって。ほら、そろそろ日が沈むから早めに行ってきな」
良かった。言葉も通じたし、失礼なこともしなかったようだ。
それにすごい気のいい人で良かった、まずは教えてもらった宿に行こうかな。
そう思って石畳の道をゆっくり進んでいってみる。
この村思っているより何倍も大きいな。奥の方に明らかに偉い人が住んでそうな屋敷があるけど、これは町とは言わないのだろうか?村って言うともっとこじんまりした、数十人で住んでるようなとこを意識してたんだけど。
村の後ろ側は森かな? 風車がところどころにあって、石造りの家々からは煙が上がって、日が落ちてきたことで街並みが赤く染まってきて……感動するな。
そうか、これからはこんな景色を見て過ごすのか。
「なぁ…おい…なぁ…おい! 聞いてるのか?」
びっくりした。感動してたらいつの間にか子供が着いてきていたみたいだ。
「うん? どうしたんだい」
「なんかくれよ、食いもんとかさ」
もしかしてそうゆう感じか?
「いいけどお金はあるのかい?」
「金なんてねぇけどさ、いいじゃん。なんでもいいからさ
くれよ」
もしかしてというか、やっぱりたかられてるな。
こうゆうのって断ったらなにかされるとかあるのか?
「ならこのパンでもいるか?」
しょうがない、ここに来る途中に小腹が空いて馬車の中に出したパンのあまりでもあげるか。あげても大丈夫だよな?
「なんだそれ、パンじゃねえよ。パンって言ったらもっと茶色くて、硬そうなやつだろ? 俺がガキだからって何食わせようとしてんだよ」
「まぁいいから食ってみなって普通のパンだよ」
この世界のパンは全く別物なのか?
「……おいおっさん」
「お兄さんな? なんだよ、まずかったら捨てていいぞ」
「なんだこれ……なんだよこのパン」
「え?」
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