スローライフな異世界行商人

@marbolo

第1話 始まり

前世はは別の世界で店に立ってものを売る仕事をしてた。

今はただの行商人をしているおっさんだ。

何の変哲もない本当に普通の人間。

ただちょっと別の世界から来たってだけで特別な種族でもなければ、なにかすごい力を持っている訳でもない。『神様に選ばれて世界を救う』はずもなく『教会の使徒として民を守っている』人がいると聞いてすごい人もいるもんだと感心する。

例えば、荷物を載せた馬車が魔物に襲われて助けを求めているところに颯爽と現れ、普通の人間では考えられないような力で魔物を圧倒し、助けたことでものすごく感謝され「なにかお礼を」と言われ、「いえいえこの程度のこと」と言うが、「せめて馬車に乗って行ってください」と言われるのでありがたく乗せてもらうような勇者がいたとして、俺は乗・せ・る・側・だ。

魔物に襲われ、助けられ、お礼をしようとするが断られる側。


あの時はほんとに急にこっちの世界に来てこの体になっていた。

前世では意味もわからず突然死んだ。脳卒中?脳梗塞?よく分からないけど突然倒れて、死んだ。

ああいうのは特に前触れもなく起こるみたいだし、どうしようもないだろう。

なんかこうやって突然死んだ人はみんな異世界に転生してるのではないだろうか。


そして死んだ途端にあからさまに神様みたいなものが現れて告げられた。

「ごめん! なんか緯度と経度を間違えて殺しちゃったみたいなんだ。完全にこっちのミス。なんの弁明もない。その代わりと言ってはなんだけど異世界に転生させるからよろしくね。なにか欲しいものある? こっちのミスだからなんでもあげる」

って超矢継ぎ早に言われて何がなんだか分からないまま

「たび、旅がしたいです。綺麗な景色が見たい」

って言ってしまった。

多分死ぬ直前まで結構仕事してたからそんなこと思ったんだろうな。使う暇がなくお金は溜まる一方。前世は生きるために働いてるのか、働くために生きてるのか分からなかったからな。

神様っぽいひとが「よし、分かった」と言った瞬間に俺は気絶して、この幌馬車ほろばしゃと俺が草原の真ん中に佇んでいた。

そこからは何となく行商人として旅をしている。

そんなただのおっさん。


なんの力もないと言ったがそれはちょっとだけ嘘である。

俺自身にはなんの能力もないが、さすがは神様っぽいひとにもらった馬車、こいつがちょっと凄い。

この世界に来てとりあえず幌馬車に乗ってみたところ、手元にゲームで言うメニュー画面のような、タブのような、設定画面のようなものが開き、この馬車をいじれることが分かった。


例えば元々は幌馬車だが、別の馬車を選択すると貴族が乗るようなキラキラした馬車に変わり、逆にボロボロの馬車にも変えることもできた。さらに見ていくと、荷台をひく馬も変更が可能のようで、虫からユニコーンまでサイズも自由自在に変えられた。

そして最後にこの馬車の1番おかしいところ。中身を変えることができてしまった、自由になんでも。

食べ物、武器、物資、この世界にあるはずの無いものまで……

流石に金貨そのままとかは無理だった。それじゃつまらないからね。

そうゆうわけで行商人としての旅はスタートした。


懐かしいなそういえばその時に決めたんだ、どうせ1度無くなった命だどうせなら【馬車でこの世界を旅しよう】って。


そう、その時から俺はこうやって旅をしてるんだ。

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