order41.カフェラテとデジャブ

吸血鬼のアヤメやベアトリクスが喫茶「ゆずみち」から飛び出して数日後のお昼。

天気は快晴だからか、太陽の日差しによって暑く感じる。

ただ、風が若干吹いているため汗をかくほどでもない。

そんな良い天気にもかかわらず、喫茶「ゆずみち」にはほとんどお客がおらず、カウンターに一人の男性が座っているだけだった。


「あついー。アイスカフェオレがうめー」


勇者がカウンターでアイスカフェオレをがっつり飲んでいる。

柚乃も暇だからか、勇者の隣に座ってマスターに注文する。


「私もミックスジュース~」

「あいよ。ちょいとお待ちを」


何も反論せずに柚乃のミックスジュースを作る始めたマスターに、たまたまメニュー表を眺めていた勇者が尋ねる。


「マスター。このメニュー表にある『アイスカフェラテ』ってなんだ?アイスカフェオレの間違いかと思ってたんだが、アイスカフェオレは別に書いているし……」


マスターはどのように説明するか少し悩みながら説明する。


「コーヒー豆のいり方とか由来とかは色々違うんだが……わかりやすくイメージで言えば、カフェオレは苦味少なめでミルク少なめ、カフェラテは苦味多めでミルク多めかな。飲み比べてみるかい?」

勇者はマスターの提案にニコニコ顔で答える。


「頼む!飲んでみたい!!」

「あいよ」


そう言うと、マスターは柚乃のミックスジュースを完成させて柚乃に渡しつつ、勇者のアイスカフェラテを作り始める。

ただ、作りながらも勇者に聞きたいことがあるのか、声をかける。


「勇者さん、結局レミリアの町はどうだったんだい?」

「あぁ。確かにベアトリクスから逃げだした奴全員が見つかった」


勇者は興味なさそうに話しつつ、飲み干したアイスカフェオレの氷を一つつまんでガシガシと噛み始めた。そして続けて話す。


「その場はベアトリクスが土下座をして謝ったことと、そのちょっと後に来てくれたトリアの顔を魔族のみんなが立ててくれたから、その場はどうにかなった」


そこで一旦話しを止めてしまう。横にいた柚乃は続きを聞きたいからか勇者に聞いた。


「で、そのあとは?」

「あぁ。ベアトリクスと人間は解放されたものの犯人もわからないし、本当に人間は迷い込んだだけなのか?ということで疑心暗鬼が広まっている。人間側全員が剣という武器を持っていたことも悪い方向に進んでいる」


勇者は少し悔しそうに話しをした。

そこにアイスカフェラテを作り終えたマスターが話しかけながら勇者に飲み物を渡す。


「魔族側の話では、四天王のダズってやつが怪しいという話だった気がするが、そのあとは何もなしなのか?」


勇者はアイスカフェラテを受け取りつつ返事をする。


「詳しくは知らないが、そうらしい。色々調査したけど、証拠も見つからずどうしようもないっていうのが現状だそうだ。魔族側のピリピリした感じが人間側にも伝わっていて、戦争まではいかないものの、冷戦って感じだな」

「なるほど。イロナちゃんが来れないって言い始めたのも、急激に客足が減ったのもそういう理由か……」


マスターは肩を落とす。その様子を見た勇者はこの場を明るくしたいのか少し元気な声でマスターに話しかける。


「まぁ、戦争が始まっていないだけマシともいえるし、犯人さえ見つかれば前の活気あふれる喫茶店に戻れるさ。ただ……」


勇者は再び言葉を濁す。少し考えたのちに話を続ける。


「ただ、ルイの調査で分かったことだが、今回の一件で魔王の選挙が荒れているらしい」

「どうして?ほぼ決まり的なことを話していたじゃないか」

「それが、今回の一件から人間側への侵略の声が高まっているようだ。それに魔王が待ったをかけていて、それに反発して人気をあげているのがダズというやつらしい」


マスターは唖然とする。柚乃はわけがわからないのか聞き返す。


「つまり、今回の一連はダズってやつが悪いのにその人が魔王に名乗りを上げてるってこと?」

「そういうことだ。とはいえ、証拠がないからなぁ……」


勇者は頭を抱える。マスターも考えているようだ。

ただ、柚乃だけはピンと来ていないのか、はたまたイメージが湧かないのか全く興味なさそうにカバンを探る。そして一冊の本を取り出した。


「昨日、《スパイの極意100選》って本を買ったんだけど、読む~?」

そう言いながら、柚乃は勇者に本を渡す。

「だから、どうしてそうなるんだ……」

と頭をさらに抱えつつ、本をパラパラとめくる。


「第78の秘訣、情報は本人から聞き出すに限る。聞き出すのが難しければ、お酌をして酒に酔わせてから聞くも良しねぇ。そもそもこんな本が異世界にあるなんて……」

興味なく見て呟く。


「つまり、お酒が強くて、四天王に近づくことができて、でも顔はばれてなくて、お酌できそうなやつなんているわけ……」

勇者はそこでピタッと止まる。あまりにピッタリ止まったのでマスターは少し心配気味に話しかける。


「勇者さん……?」

そして勇者はバンとカウンターを叩きつつ立ち上がる。


「いた……。お酒が強くて、四天王に近づくことができて、顔がばれてなくて、お酌ができて……なんでもいうこと聞くって言ったやつ……うん。この本ちょっと借りるね。ありがと!!」

そう言うと、バタバタと喫茶店から出て行った。


アイスカフェラテは一口も飲まなかったことにマスターは苦笑しながら呟く。

「まぁ、何か案が出たのであればいいけど……この流れ、どこかで見たことあるような……」

その発言を聞いた柚乃がマスターに話しかける


「それってデジャブってやつでしょ?前にもあった気がするってやつ」

「そうそれ。うーん、なんかあった気がするんだけど、まぁ勇者がなんか思いついたならいいや。柚乃ちゃん、このカフェラテいる?」


そう言いながら柚乃に差し出す。それを柚乃が受け取る。

「せっかくなんで頂きます~!」

と言いつつ、アイスカフェラテを受け取り、飲んで一言。

「甘い~!!これ、砂糖多すぎない?」

「……このセリフも聞いたことがある気がするんだよなぁ……」



ここは、デジャブが発生してしまう喫茶「ゆずみち」

さて、次はどの方が酔っぱらってくるのでしょうか。

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