第三話 憑依と初陣

ゲートを通った先は 比較的現代的な町が広がっていた


「ここが…魔界…?なんかこう…意外と近代的ね…」

「そりゃあ人間界が発達すれば

 こっちの世界の技術も上がるからねぇ…」

「ふーん…で、ハルマゲドンはいつからなの?」

「あぁ、まだ言って無かったね 明日だよ」


「……明日ァ?」

「そうだよ 今日は練習も兼ねて試合をしてもらうよ

 いきなり戦うのは無理があるだろうからねぇ」

「今日戦うのはいいのかよっ!」

「安心しなよ、今日戦う相手は多分

 悪魔の力は使わないよ」

「…?なんで?」

「そりゃあ生身の人間 それも女子高生相手に

 力を使うまでもないからだよ」


「…へぇ…そこにつけ込むんだ…」

「そうだね 相手は人間をいたぶるのが趣味の

 男になるだろうね」

そんなものなのかな?とは思ったが…

たしかに、悪魔の力を持った奴がただの人間相手に

負ける訳がないと思うのは当然だ


その後 コロシアムという今日の戦場に案内された

こっちの世界のコロッセオに近い

レンガで作られた闘技場だった

中に入り、試合を幾つか見ていると分かるが

ここでは戦いにルールがない無法地帯らしい

相手を殺そうが犯そうが

なにをしたって構わないそうだ

さらには 客は選手に賭けたり

罵詈雑言が飛び交ったりと治安も酷い

「…ここで 今日戦るの…?」

「怖いかい…?」

「はい…」

「そうだろうね 初めて?の非日常だからねぇ

 まぁ、安心したまえよ ボクが累に憑依する

 そしたらあとはボクに任せてくれればいい

 大丈夫…キミは負けない…」


……不思議と不安は感じなかった

ただ、戦うという事に恐怖を感じる自分がいた…



時刻は午後6時を過ぎたあたりだろうか

赫い太陽が沈み 辺りに闇が広がる

街灯が付き その光で戦場を照らす


待機場で待っていると 当然だが

私を見て嘲笑う者や 見下す者 煽る者もいる

そのような者達の視線を無視し

私はバラモンに話しかける

「ねぇ、なんであなた出てこないの?」

『いやぁすまないね ボクが人前にでたら

 キミが悪魔の力を使える と思われるだろう?

 ボクはこのまま試合まで潜伏してるよ』


バラモンは少し前 コロシアムに入る前に路地裏で…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そういえば、憑依ってどういうやつなの?」

「そうだね、累は知る必要があるね

 憑依というのは主に悪魔が人の中に入り

 その体を操る というモノなんだけど

 憑依して戦う時はボクは憑依するけど

 主導権は累のままにする

 そしてボクはキミの体を強化する

 これで魔法耐性ができたり身体能力が上がるんだ」

「それで戦うってこと…?私が動くの…?

 もし私が思うように動けなかったら…」

「その時はボクがキミの体を借りるよ…

 それでもいいかな…?」

コクリ…と頷くとバラモンは

「じゃあ、憑依させてもらうよ

 もし誰かに憑依しているところを見られたら

 まずいからねぇ…いいかな…?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


といった事があってバラモンは私の体に憑依している

特に変わったことは無いが…

自分の中に他人がいるのはヘンな感じだ


「午後の部、6試合目終わりました 

次の試合の方、準備の方お願いします」

とスタッフが案内する


『ついに初陣だね…』

「うん…」

『緊張しているかい…?』

「少し…でも 大丈夫 怖くはないよ

 だってこの力 早く使いたい…」

『フフ…じゃあ、解き放とう 己の力を…!』



『さぁ!第7試合目はなんとォ!

 人間界より飛び入り参加ァ!

 現役女子高生、ルイン選手ダァァァ!』


闘技場中央の円盤に登ると

観客からは驚きの声と歓声が上がる

ルインとは私の偽名だ

本名は不味いらしいのでバラモンがつけてくれた


『対するはァァやはりこの男ォ!

 ミスターァデープゥゥゥ!』


正面から現れたのは 醜い、

全身を武装した太った大男で右手に盾、

左には大型の菜切り包丁の様な大剣を携えている

その男が円盤に立つとさらに大きい歓声が上がる


『このミスターデープ、人間を幾度と嬲り殺し、

 ついた二つ名が人間壊しブレイクマーダー!さぁこの男、

 今夜はどんな殺戮ショーを見せてくれるのかァ!

 一体どんな無惨な姿に成り果てるのか

 ルイン選手ゥ!ワタクシ楽しみで目が離せません!

 ではぁ第7試合ィ開始ィィィィ!』


「ブヒャヒャヒャヒャヒャ!

 こぉんな上物がくるとはナァ、ハァァ

 今日はお楽しみだぜぇ フゥゥー

 おい嬢ちゃん…死ぬのが嫌ならよォォ

 地面に這いつくばって命乞いすればよォ

 命だけは助けてやってもいいぜぇ…フゥゥー

 代わりに抱かせてもらうけどなァァ

 ブヒャヒャヒャヒャヒャ!」


男は下衆た目で私を舐め回す様に吟味し、

品定めでもしている様だった

既に陰部は膨張している様だったが


『話す必要は無いよ、累

 怖れずに、進んでみるといい』


バラモンの声を頼りに私は前へ1歩1歩進むと…


「おぉ!?やる気なのかい嬢ちゃん…

 いいけどよぉ手加減しねぇぜぇぇぇ

 今ならまだ泣いて縋れば命だけは助けてやるぜぇ」


私は男の言葉を無視し また1歩進む


「そうか、喋らんか、進むか、

 なら 遠慮はよぉ いらねぇなぁぁぁぁ

 泣いて 喚いて 命乞いして 漏らしても

 テメェの肉を 削ぎ落としてぇぇぇ

 ぶち壊して俺のコレクションにしてやるぜぇぇ

 光栄に思えよぉぉ?テメェはべっぴんだからよぉぉ

 四肢を削ぎ落として肉便器にしてやるぜぇぇ!

 テメェ見てェな女子高生のよぉぉぉぉ

 生意気な顔が苦痛で歪み 悲鳴の雄叫びを上げて、

 そこに肉欲をぶつけんのが最高なんだよぉぉぉ!」


言い終わると同時に、ヤツは大剣を振り上げた

私はヤツの大剣の間合いに入ると同時に踏み込んだ ヤツは大剣をふり降ろし私の右腕を切断しようとする上から襲ってくる凶器を左に転がり回避し、

ヤツの足を掴みにいくと盾で防がれ、

そのまま盾で振り払うようにして私を吹っ飛ばす


地面を転がり、砂塵が舞う


地べたから顔を上げ、男を確認すると

既に大剣を振り上げていて回避が間に合わず

左腕に直撃した 骨に激痛どころではない痛みが走る

「ギッッッギャァァァァァァァァァァッ!!!!」


痛い 痛い 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!


「おぉ?腕切り落としたつもりなんだがなァァァァ

 意外と丈夫なんだなァァァァじゃあァ

 削ぎ落としてやるぜぇぇぇぇ!」

男は大剣を振り上げ、勝利を確信し、振り下ろす


その瞬間を 私達は見逃さなかった

男の口元が緩み 笑みがこぼれた顔

大剣が右腕に直撃する寸前に


『さぁ、始めよう』


ぶあぁっと黒い魔力が体を駆け巡る

それは一瞬で広まり、累の体を覆った

途端 累の体に黒い紋様が浮かび上がる

それと同時に体を捻り、勝利を確信した一撃を躱した

驚き、渾身の一撃を外した男はバランスを崩し

隙を見せる その隙を逃さず私の右手は男の首を

掴み上げていた 

自分より大きく、重い相手を

片手で上げる程の膂力 そして一瞬で体を捻る

その身体能力 これが悪魔の力だ


会場にいる誰もが息を忘れていた

「な…んで…ぐ…あっ…」

掴む力を強めると 男の顔がみるみるうちに青ざめる

「がっ…カハッ…おっ…まっ…た、助け…ひゅっ

 お助けっ…か、金っ…金はたんまりあるっ

 いくらっ…いくら欲しいっ…?渡すっ…やるっ

 好きなだけっ…だ、がら…がっ…助げ…っ」

私は無言で力を強め 首を抉りとった


ブシッッブシャァァァァァァ

男は頭が千切れ欠け、首からドス黒い血を吹いている

男は絶命し、その場に崩れ落ちる

その骸の股間を 思い切り蹴り潰した

ぐしゃぁっと玉が潰れ、黄色の液体が流れ出る



私はその血を頭から被る


「…生温かい…しかも…酷い匂い…

 これじゃあ…私の心は満たされない…」



その後、私は男だったモノをその膂力で

引きちぎり、内臓をぶちまけ、

一部は粉微塵になる程に潰した




『……ハッ…しょっ…勝者っ…

 ルイン選手っ…ですっ…』

絶句して言葉が出なかった司会が

冷静さを取り戻し、進行を再開する



『クフフフ……これは、序の口だ…

 いずれ、この快感を 悦楽を…

 これの何万倍を…ク、フフフ…

 楽しみだ……』



バラモンは不気味な笑みを浮かべた

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