私を愛してくれた人
ゆーすでん
私を愛してくれた人
出会った時は、何とも思ってなかった。
でも、会う度に気になって話しかけるようになった。
低くて、心地よい君の声。名前を呼ばれる度に胸が苦しくなる。
あの時、貴方は誰かのものだったね。
あの子抜きで会うことが多くなって、会話を重ねた。
大勢で遊びに行った昼間、隠れてこっそり手をつないだね。
会う度に、君の瞳が熱を帯びていく。
結ばれた夜。私は、幸せになれないと感じた。
でも、手放せなかった。
しばらく経ったある日の朝、泣いてるあの子に彼が好きだと告げた。
何故か周りは、私を責めなかった。一瞬のとまどい。
私の直感が、正しいことを悟った。
私を愛してくれた人は、唇から指先・爪先まで全部キスしてくれた人。
毎日一緒に居たけど、心は離れていくもので友達と会いに行くと言っても
香水の匂いがすればやはりそうかと隠れて泣いた。
それでも、何故か周りは私に優しくてそれが余計に君を傷つけた。
ただ一緒に居られれば楽しくて笑えた日々から、お互いが歩く道を
決めなきゃいけなくなった。
君は、分かっていたんだよね。
私が、君と同じ道を選べないことを。
でも、私はそれを認めることが出来なかった。離れても、愛していけると信じてた。
認めて欲しいと思い続けた君を、私自身が誰よりも傷つけた。
お互いに別の人を見つけて、別れて。
君は、この世界から居なくなることを選んだ。
大好きなものの中で、煙に包まれて死んだ。
暫く誰にも見つからなくて、体から蛆が湧くころ家族のもとへ帰れたね。
君は今も、そこにいるの?それとも、地獄の業火に焼かれているの?
今でも、君を想うよ。君より何十年も歳をとった。
今、君に会いに行って私だと分かるかな。
地獄で君に会えたなら、ひと時でも君に触れられるだろうか。
腐臭と絶え間なくやってくる拷問のなか。
ふと見上げたら、君の顔は半分骨だけかもしれない。
それでも、名前を呼んでくれるかな。
今から追って、地獄で戯れ、共に獄卒獣に潰されようか。
卑屈な気持ちのままの毎日でも、私は今日を生きている。死なずに生きている。
私を愛してくれた人、やっぱり君とは別の道を歩く運命だったよ。
残念ながら、死ぬのが怖くてしょうがない。
無様でも、傷つけた私みたいに醜くても生きていて欲しかった。
今の私は、たった一人の人に愛されなくても、誰かに頼りにされているんだよ。
さようなら、私を愛してくれた人。
寿命が来て、天国に行ったら私が上から引っ張り上げるから、
骨だけになっても私の名を思い出しながら、そこで待ってて。
私を愛してくれた人 ゆーすでん @yuusuden
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