第2話

 私は少女?に連れられるがままに、森を歩いていた。

 私のことを退屈に、そして不安にしないようにか、彼女は時々ここ周辺のことや、この森のことを話してくれる。

 もしかしたら私のような迷子に慣れているのだろうか。

 「この森は観光地の一部」「地元の人からも人気がある」「だが時々凶暴な野生動物もいる」

 以上は彼女が話していたことだ。

 今生きていることと彼女に出会えたことに感謝をした。

 ……それにしても。その姿は、まるでガイドのよう。

 実際ガイドをしているか、話が本業か、というところなんだろうか。

「大体、後少しで着きますよー」

「了解しました」

 なんて、畏まった返事をした。

 

 森を抜けると、光が一斉に私を包んだ。

 街へと着いたのだ。


――街、広場

 そこはまるで、ラノベや漫画に登場する中世ヨーロッパのようだった。

 道路はタイル、建物は木造、街行く人々は都会的というより田舎的な、だが美しい服装で身を包んでいる。

 どこからか音楽が聞こえてきて、みんなが笑っている。そんな街。


「ここまでご親切にありがとうございます」

「ふふ、どういたしまして」

「……そうだ。そういえば名乗ってなかったですね」

「私の名前はアリス。この街で酒場の店主兼オーナーしてます」

 少女?は笑いながらそう名乗った。

 アリス……か。

「じゃあ、私も。私は四條有栖。東京で大学生してます。大学生といっても、まだお酒は飲めないのですが……」

「……トウキョウ? ダイガクセイ? お酒はまだ…………?」

 アリスはキョトンとしながら、そう呟いた。

 もしかして、もしかしてなのか、これ。

 ラノベや漫画に登場する中世ヨーロッパのような街並み、街行く人々の服装、どこからか聞こえる音楽。


 ……もしかして私、異世界来ちゃった?

 ただひたすら頭の中は混乱している。

 まるでこの現実を拒絶するかのように、頭が回らない。

 今私の身に一体何が起きているのだろう……。

「えっと、もしかして、遠い遠い場所から来られたりしましたか……?」

 この沈黙を破ったのは、アリスだった。

「多分、そうかもしれません……」

「と、とりあえず、今夜は私の酒場で面倒見ますよ」

「何もかもありがとうございます……」

「じゃあ、向かいましょうか……」

「はい……」


 広場から5分程歩き酒場へ着いた。

 アリスさんは店内を見てくるということで、先に店に入っていった。しばらくしたら戻ってくるそう。

 なので私は店の外で待機中。

 ……それにしても奇麗な建物。

 木造3階建ての建物には、表口に「HOUSE Alice」と書かれた看板が掲げられている。このお店の名前だろうか。

 1階には窓が規則正しくあり、2階3階には大窓が一つずつあり、そして小窓が散りばめられている。

 ……そういえば、この街の建物は窓が多い気がする。

 ということは、この街は結構栄えているのだろうか。

「……有栖さん、お待たせしました!」

 有栖はエプロンを付けて出てきた。

「HOUSE Aliceへようこそ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る