呂不韋の権力
そして
おれが即位して6年、つまり秦王政の6年ごろ、周辺諸国の
秦国内は大喝采。おかげで呂不韋の名を知らない国民はいない。
おれはつとめて王らしく、呂不韋に「
称号に後押しされた呂不韋の権威は上りにのぼって、数えきれないほどの
おれはといえば、お飾りの玉座に座って、「ああそれがやりたかったのかあ」と頬杖をつくことしかできない。呂氏万歳、呂不韋さま万歳。ああ、それがお前の
おれは失望していた。あの瞳の輝きは嘘であったか、それを見極められなかった自分の目が曇っていたのか、と。王の座を望んだわけではない。呂不韋にここまで連れてこられたにすぎないおれは、傀儡の王としてこれからを過ごしてゆくのだろう。父と同じく、適当なころ合いに不慮の死を遂げるんじゃなかろうか。
おれはもはや、この相国を疑っていた。呂不韋が父を殺したのではないかと。いずれおれもこのお飾りの椅子から引き下ろされる時が来ると。呂不韋の目にかすかに宿り始めた何かを、おれのおかしな目は敏感に感じ取っていた。
こいつはおれをいずれ、始末しようとしている。
おれは玉座のひじ掛けを掴んだ。甘い汁だけを啜られつくして枯れた、父のようにはなりたくない。おれは、あいつを、呂不韋をどうにかして蹴落とさねばならない。
今のおれには力がない。王として命じても、おそらく、「国の英雄」かつ「仲父」かつ「相国」として盤石の立場を築き上げた呂不韋の首は飛ばない。廷臣たちに宥められて終わるだろう。そうでなくとも、食客を三千人も抱えた男を屠れと命令することは不可能だ。その三千人が束になって俺の首を狩りに来るに決まっている。
どうにかしてこの盤面をひっくり返さねば、道はないのだ。
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