第四話 「個人ランキング4位『白石潮満』」

時刻は13時過ぎ、場所は東法高校の校庭。

午後の実戦訓練は始まる前に各自で準備運動をしておく。

毎回授業前には準備体操を始めているらしいが、今日は特に早いらしく、理由は午後の担当教師が静恵先生だかららしい。

静恵先生の授業は、そのカリスマ性で生徒からの人気も非常に高く、先生が担任クラスになった教室は勝利の歓喜が起きる程らしい。 


「準備運動が終わったら、隣の席の人と軽いウォームアップでならすんだ。」


ということで俺と相対してるのは白石潮満白石潮満しらいししおみ。個人ランキング4位という実力者だ。

高校2年生で「四天王」入りしたのは過去初めての快挙である、

彼女も静恵先生同様、メディアにも出ており、世間的に非常に人気もある。

なので席が隣同士になれたのは幸運な出来事で、周囲の一部からは羨望の眼差しを向けられている。


(なかなか厄介な事になったな…)


俺は心の中で溜息をしつつ、彼女と相対した。


「上野君の戦法はどんな感じ?私は魔力操作の確認をしたいんだけど…」


白石の問いに対して俺は、


「じゃあ俺は剣を使うよ。それにしても「魔力操作」なんて言ったら結構能力絞れちゃうけど大丈夫?」


俺は木刀を構えながら素朴な疑問を問いただすと、


「別に準備運動の一環だし、私の能力は有名だからね。もちろん木刀だし手加減はするわ。」


白石は手に黄色い魔力を集中させると、それを俺に放つ。


「カンッ」


その放射線の様な魔力を俺は木刀で弾くと、魔力弾は渋い音を鳴らしつつ消滅した。ちゃんと手加減はしてるようだ。


「綺麗な構えだね。師匠といるの?」


「師匠ではないけど、手解きは受けたことがあるよ。」


「ふーん。じゃあ少しスピードと弾数増やすから、しっかり『認知速度上昇』してね。」


「認知速度上昇」とは文字通りの意味で、魔力を脳に集中させて周囲の動きを数倍からの速さで認識できる、今の時代を戦うためには必須級で力だ。

使うのにそこそこの魔力消費を伴うが、これが使えなければ普通の銃弾すらも避けられない。

これに加えて「防御魔法」を体の表面に展開するテクニックを戦闘の基礎とされており、中学生義務教育で最低限マスターさせられる力だ。

白石は俺が忠告に頷き構えると、手に黄色い魔力を集めた後に、その魔力5つに分裂させた。それを先ほどより速く、山なりのように放つ。


(えっ、急に難易度上げすぎじゃないか?)


俺は白石の技術に少し驚きつつ、そのビームを弾いこうとする。

しかし俺は最初の3発しか弾くことが出来ず、残りの2発を肩と膝に食らってっしまう。


「痛て!」


俺は尻もちをつくと、当たった場所を確認する。そこには微かにすり傷があり、少し血が出ていた。


<身体損傷確認しました。損傷率は0.05パーセントです。>


脳内に謎の女性の様な声が鳴り響き、自分の身体状況を報告してくる。


(またこの声か…ってか0.05%って報告する意味なくない?)


俺がそんな事を考えてると、潮満と周囲の何人かの生徒が集まってくる。


「ごめん!!急に難しくしすぎたよね、大丈夫?」


「うん大丈夫。少しびっくりしたけどかすり傷程度だから全然問題ないよ」


俺が自分の足で立つと、正真も来ており、


「四音大丈夫か?潮満もっと抑えろよ、四音は今日転校してきたばっかなんだしよ。」


「わかってるよ!『少し構えが綺麗だったから大丈夫かな』って思っただけ…。ほんとにゴメン!!」


「全然大丈夫。防御出来なかった俺が悪い訳だし」


俺は二人を諫めるながら、体を動かして無事な事を示す。

すると静恵先生と日黒先生が校庭に登場し、生徒に集まるよう号令をする。

俺達も静恵先生のところに集まるように走り出すと何処からか、


「上野君意外と強くないのかな?」

「転校生なんて珍しいから少し注目してたけど…動き見てると微妙だね。」


と小声で話す声が聞こえる。

俺は、(いい感じで注目が収まりそうだし、結果オーライかな…)と心をそっと撫で下ろす。

生徒全員が集まると、先生が手を叩き


「今日は2年になってから最初の実戦訓練だ。そのうえ転校生もいることだし、今回は全員の実力を見ようと思う。各自誰からでも良いので、実力もしくは仲が近しい人と組んだら、2分間のシングルマッチをみなの前やってくれ。」


生徒達は少しザワつきながらも、先生がまた手を叩くと一斉にペアを組み始める。

正真も別の生徒にペアを申し込まれて、少し考えながらも承諾した。

ペアを組めず浮いてるのは、俺と白石を含めた数人ほどだった。


「白石は戦える相手がいないだろうから私が相手しよう。前に出てきな。」


「はい…!!」


静恵先生がそう言うと、白石は神妙な面持ちで前に出てくる。

周囲は大きくどよめく。静恵先生の指導を受けられるだけでも相当運が良いというのに、『静恵先生3位白石潮満4位』の戦いを間近で見れる機会など、この先2度とあるかわからない程の激レアだからだ。

二人が生徒の前に出てくると、日黒先生が二人の周囲に円状の防御結界を張る。

静恵先生は木刀を片手に、白石は木刀を右手、魔力弾を左手に構える。


「それじゃあ早速始めようか。白石準備は良いかい?」


「はい!いつでも大丈夫です。」


「よし。それじゃあ日黒君、開始合図よろしく。」


「はっ!。ルールはどちらかのKOもしく降参、決着不可の場合は審判わたしの判断で勝敗を決めさせていただきます。それでは戦闘…開始!!」


こうして二人の火蓋が切られるのであった。





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